2007年12月21日

夏山千歳の呟き

「この世界には魔法と呼ばれるものが、何百通り・・・何千、何万通りございますよね。
私はその中の一つを使うことしか出来ないのです。
正確に言えば、私自身は何も出来のうございます」

「私の一族は自らの身体を取引の材料として、数々の精霊や霊獣、妖を使役してまいりました。
使役だなんて偉そうに言っても結局、相手の方に主導権があるのですけれどね。
私達は私達のアイデンティティを守るために『使役』と言い、相手もその事を『承知』した上で従っておりました」

「ちっぽけなアイデンティティですよ・・・でも、これが無いと生きてゆけなかったのです。
夏山の一族が夏山足るには、何か一つ突出したものを持っていなければならなかったのです。
そういう世にございました、戦乱に明け暮れ、未だ黄昏を見ることも無い世です」

「私の先祖は自らの血に流れる特異性を発見致しました。
夏山の一族だけは、どう逃げようとも容易に魔物に捕らえられてしまうのです。
どんな方法を使っても、必ず見つけ出され、頭から食べられてしまうのです。
魔の物に悦ばれる身体、現世と彼世を繋ぐもの。
ただただ、美味しいだけの食物。」

「それが夏山の家の、ほんの少しだけ突出した特異性なのでございます」

「先祖はこの力をマイナスからプラスに変えるための策を家に残しました。
自らを守る力を得ること、血を濃くすること、そして何より・・・血を絶やさないこと」

「近親間の婚姻で血を濃くしてゆきました。
その結果、脆弱した身体を守るための婚姻でも無駄には出来ません。
力を持った者を家に引き入れました。
協力的では無かった者は殺してその血肉を食らいました。」

「土台が出来たら次はそれを使用する方法を得ねばなりません。
まずは力の弱い精霊を捕らえ、彼らを肥やさせ、自らの手駒としました。
どうやって肥やすか・・・?そんな事、想像がつきましょうに」

「見込みのあるものは精霊だろうと人間だろうと取り立てられ、見切られたものは他のモノの口の中。
そうやって家の中で精霊の養殖をし、夏山の家は繁栄していったのでございます・・・」

「でもそんなことが未来永劫続く筈がございません。
既にね、私が生まれた時には家は衰退していたのですよ」

「折れそうな柱に少しの力を加えれば、容易に倒壊してしまうでしょう。
母上の事はそれと大して変わらなかったのかもしれません。
きっと今までの業が起こした報いだったのだと、私は思っております・・・」

「夏山の家は衰退から没落へ、その道取りは一瞬にございました。
今や使役の技を使用できるのは千歳だけ。
その資料も将来的には全て燃やしてしまうつもりです」

「千歳は最後に残った夏山、最後に残った業」

「最初に申し上げましたよね。
この世界には魔法と呼ばれるものが、何百通り・・・何千、何万通りにございます、と。
千歳は一族に伝わる魔法と言うものは、その一族の生きた証なのだと思っておりますよ」

「千歳は千歳の名と共に、夏山の家の生きた証を・・・暗く湿った、血生臭い業の歴史を終わらせたいと思うのでございます」
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posted by 夏山千歳 at 10:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 昔話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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