2013年03月13日

花鳥風月の乱 前編

■共通諸注意
この物語は千歳本筋RP番外編です
本筋RPは全体の流れとして非人道的(具体的には近親間の婚姻、カニバリズム等)な描写、設定が含まれる場合があります(アップする際に冒頭注意として上げていきます)
背後様が在学中の方はご遠慮願います
性描写はありません
道徳の分別、現実と創作の区別のつく方、上記の非人道的描写をエンターテイメントと割り切れる方のみ、御覧になってください

尚、作品中のゲストキャラクター様には、既に確認と了解を得てアップしている事を明記しておきます

■追記
今作品は紅・梅花嬢、リュクシース殿、セイリオス殿と憩いの間にて行った2対2の戦闘RPのログとなっております
今までの本筋RPの流れを汲んでおりましたので番外編扱いとさせていただきました
ご了承くださいませ

■登場人物
【天狼が求む解】セイリオス【双天】
自身の素早さを活かした接近戦のスペシャリスト。
特に零距離からの攻防は、見る者の目を奪う鮮やかさ。
鋼の肉体のみならず剣を持つ理由は、その身に封じた力を御するためだけではない。
剣に命を、風に技を、魂に誇りをかけて今、立ち向かう。

【彼方の天蒼】リュクシース【双天】
我流の剣技で世界を渡り歩く旅人にして剣士。
風を身に纏い打ち合う撃鉄のような戦法は、経験の積み重ねにより実直である。
災厄を内に秘めながらも、竜に身を変えたその姿は凄絶であり壮麗。
翔ける、誰よりも孤独を知る己が道行へ、ただ駆ける。

【浮世の虎】夏山千歳【双花】
夏山家は当主、白妙の千歳。
倭を尊び、雅に紡ぐ言の葉は古より続く夏山の世界の囚われ人。
胸中秘める想いは芯より堅く劫火より熱く。
絆で結びし虎と共にその一振り歴史を示す。

【華輪の戦姫】紅・梅花【双花】
咲き誇り散りばめて舞うは一輪の華。
乙女が描く舞踏の軌跡は鋼の武闘が付き従う。
鋼の従者はただ主に沿い続けるのみ。
沈黙の守護者を従えて、乙女は一輪の華を咲かす。


千歳本筋RP 第二部番外編:花鳥風月の乱
2012年8月1日〜8月31日筆


..
■始まりの誓い
さて、この場に集った四人の男女。

北方には赤毛の娘。
小さな身体に不釣合いな巨大な槍を得物とする。

西方には蒼穹の剣士。
我流の剣技でなぎ倒す、竜の心を秘めた孤高の旅人。

南方には蒼空の闘士。
接近戦のスペシャリスト、しかし技はそれだけに収まらない。

東方には背高の術師。
幾多の精霊と契約を結んで尚、黄昏に向かう一族の末裔。

「誓いを」

その言葉を合図に、四人の手で大地に突き立てられた剣が、境界を刻む。
広大な平原に大きな結界が張られる。

「我等、武を以って問いを得んことを」

重なる声、重ねた誇り、魂の先にあるものを識るため。
今、此処に戦の風立ちぬ。

■【双花】グリーンアイドモンスター@千歳

結界を形成して後。
やたら背の高い青年は今やと待ち構える仕合に向けて軽く伸びをしていた。

「緊張してますか?」
傍らの娘の問いかけに首を振る。
「どうかしら。
身体の芯がぽかぽかしていて、なんだか今日はとても気分が良うございます」
清廉な光を浴びて目覚めた朝のように。
五月の爽やかな風に吹かれた林檎の木の下にあるように。
「梅のお嬢さんこそ久方ぶりの仕合でしょう。
緊張しません?」
ぴりりと少しのスパイスを織り交ぜて尋ね返す。
彼らの在り方はいつだって軽口から始まる。

そう、いつだって、そうだった。
嬉しい時も、悲しい時も、始まりはいつも笑顔だった。

南東和風の白い衣に、黒い下穿き。
翡翠色の爪がなぞるのは、竜骨を削って作られた柄に鉄の刃をつけただけの、そっけない長斧。
左耳を隠すのは、まだ咲く筈の無い曼珠沙華。
ずいぶんと伸びた襟足が風になびく。
「・・・うん」
数秒、目を伏せて逸る気持ちを整える。
娘の赤毛を軽く撫でてから、傍らに仕える巨躯の虎に跨った。

虎の首元と、青年の左腕や腰元から蔓草が『生』える。
それらは強固に絡まりあって、この世に二つと存在しない手綱に変化する。
右腕からも蔓草が生え、長斧を握る手を補助するように絡みついた。
守護と補助を約する蔓草の精霊、左業の兵。

「二つの天よ、この場であなた方にお会いできた慶びに深く感謝を申し上げます」

いつの間にか、青年の周囲に実態を持たない羽虫が現出する。
それらは全てがヒトツの個にして、全ては知覚の術を持つ精霊、右業の兵。
次第に変化しゆく場の空気に虎が唸る。
大柄な身体と引き換えにスピードを失った青年を補佐する、進軍と騎乗の霊獣、東征将軍。

「虚典が一人。
恋を知り愛を知り何もかもを欲さんと、ただ嫉妬の炎に身を焦がす煉獄に身を堕とす」
真正面の片割れ、蒼空の闘士に視線を向ける。
彼はハルベルトで共に肩を並べ、勝利も敗北も分かち合う仲間だった。
同時にこの中で唯一、個人として相対したことのある戦士でもあった。
互いの手はあれから変化したとしても、癖は知り尽くしていると言っても過言では無い。
「そうして昇り沈んだ幾夜もの月こそが私の名、私のあり方」
くるりと長斧を一回転。
目を瞑り、大きく息を吸う、息を吐く。
瞼を開く。
それまでそこにあった気の優しい青年は、姿を消す。
彼は当主へ変貌する。

「よもやその血が途絶えようとも、この身は永久に夏山を率いる礎。
私は澪標の一族の末裔、夏山家当主、白妙之千歳」

強く言い切った後、地面に長斧を突き立てる。
風が、風が歌う、轟々と狂喜の歌を高らかに。
そうして、次第に刻限が近づく。

あと十秒。
「梅花嬢」
あと八秒。
「前は任せました」
あと五秒。
手元の蔓草の束から四本の苦無を取り出す。
刃には文字が彫られていた。
その苦無を媒体に作った結界内では『魔法空間』に良く似た効力が発揮される。
結界内の全てに対して敵味方を問う事無く、青年の魂を介して繋がるマナの根源の扉が開かれ注がれる。
魔力不足という決定的な弱点を持つ相棒に対しての切り札であり。
同時に無差別に増強される魔力は向かい合う二人にどのような効果を示すかわからない、諸刃の剣だった。
あと一秒。

「始点『夏山犀乃の結界論理』!!」

その値が零になると同時に、四本の苦無を空高く投げる。
それらは意志を持ったように大結界ギリギリまで突き刺さり、仕合の地に潤沢なマナの流れを生んだ。

■【双天】@リュク

はじまりの、

約束めいて突き立てた剣から不可視の光が、境界成す壁を描いて高みへと上っていくのを眺めながら。
蒼の髪の後ろ頭をがりがり掻いて、ひとつ笑んだ。

「眠れる森のお姫様は優しいキスで起こしてもらえるけど、眠れるもるるのお兄さんは『仕合だゴルァ』って蹴り起こされるわけですよ」

一部脚色しつつ、それぞれに立つ三方のひとかたを、一人づつ眺める。

俺と色を対成す紅の娘、
俺の持たない言葉で綾織る穏やの青年、
あとガチンコバカ。

最後に視線を遣ったそいつににやりと笑って、手の中に隠していたそれを放った。

かつての戦利品、蒼の女王の唇を塞いだコルク。
豊かな香りもすっかり薄れた、ただの記念品。

「約束も何にもしなかったけど、結局こうなったな。
言っただろ、『お前が言うなら、そうなるだろうさ』――」

前ばかり見てれば、いつも始まりばかり。
そうやって今もかつても生きる男と、肩を並べて。

片手に透き通るばかりの大剣、
腰に銀色の棘。
いつも通りの得物を引っさげただけのごくシンプルないでたちで進み出る。
ここもまあ多少芝居がかっても許されるトコ、

「天蒼リュクシース。
自由と彷徨に心を繋がれ、あおく、とおりすぎるもの。」

短く名乗り、右手にだらしなく色無き刃を担いだ姿勢で。

見慣れた羽虫が世界の有様を変えていくのを眺め、
虎に跨る青年と、風の闘士が言葉交わすを邪魔せぬように離れて、紅色のお嬢さんに向き直る。

カウントは、全員の耳の奥で、
「そしたら、こっちの先陣は」
等しく刻まれて、
「俺が切っちゃおっかな」

残りゼロカウント。

「始点『夏山犀乃の結界論理』!!」

高らかに響く澄んだ声音と共に、場に何かの力が満ちるのを、
マナと呼ばれるものに干渉しない体質の自分は感覚として受け止められない。

代わりに、紅の娘と数歩の距離を己の脚で詰める、至極一瞬、
声と剣を振りかぶる動作は飽くまで軽く、

「――踊ろっか、可愛い人」

蒼と紅の視線を近く重ねて、
而して重く鋭いばかりの切っ先を、真っ先に、文字通りの紅一点の喉笛目掛けて横凪ぎに振りかぶる、僥倖。

■【双天】:セイ

「フン、『あと5分〜』って言って毎度5日ぐらい寝そうな奴には丁度いい目覚ましだろ?」

脚色には脚色混ぜて返しつつ。
笑って隣を見れば、その目線を追うように相手を見やる。


「…全くだ。じゃぁ今回は、俺らが買ったらお前んとこのぷに酒解禁な」


何時か風が止んで伸ばした手はついに届いてその手を掴んだ。
今回は多分、その続きの『始まり』だ。


腰には一振りの愛刀を引っ下げて。

先に名乗りを上げた相方に続き、進み出た。

「天狼セイリオス・G・カッシュ。
 闘争は果てに、強者を楔に己が拳の伸ばした先を目指すもの。」

名乗りは相方に合わせて短く。
真正面の青年の名乗りを聞けば、向けられた視線に真正面から向き合って。

刃を交え、幾度も共に闘った同志。
その癖は既に自分が彼を知る以上には知られている筈だろう。

「…されど、男子三日会わざれば活目して見よと言う。知ってるからこそ最大に警戒張ってかかってこい」

だが、ニヤリと告げたその言葉はそれを覆す疑心の挑発。
当主へと変貌した彼がどう取るかは本人のみぞ知る胸中。

先陣を切ると聞けば、任せると頷いて。
同時に千歳が放った何かにより、魔力の器が広がるような感覚を受ける。

生憎、己の風は魔法ではなく精霊王の使役であり、そこに自らの消費は発生しない。
故に元の魔力が増えた分では何も変わらない。

「……」

“風を扱う事”においては。
顔を変えず、両の拳に風が宿る。

『描くは螺旋 聞けしは咆哮 全てを飲み込み刻め竜巻』

―風魔症・咆龍旋

横殴りの竜巻を、前衛で仕掛けた2人を避けるように後方の当主へと送り込んだ。

■【双花】:梅

「緊張してますか?」
そう問うたパートナーに同じ問いを返された。

「い〜え、ぜ〜んぜん、あのお二人相手ですもの。楽しくないわけがないですから。」
黒兎の友達が残してくれた薔薇の織り込まれた白いリボンで、豊かな赤髪を纏めながら笑う。


蒼天は高く、頬を撫でる風は涼やか。


これから刃を突合わす戦場なのに、ここには私に安らぎをくれる人達しかいない。
有難い幸福な矛盾。

ただ静かに目を閉じ、心地良い空間の息吹を体中で感じていました。

心は夢想にたゆたい、そして耳に届く声。

「・・・嬢・・前は任せました」


Σがびん


一人勝手にぼーっとしてる所に不意打ちがまさかの後ろから。

(そりゃ「私達は共に癖があるから対策立てないと不利ですよ」って千歳さん言ってくれましたし、それを「性格からして向こうもどーせ何も考えてないですよ、あはは、直球勝負っ」って一蹴したのも私です。
でものっけからそれですかーーっ)

一瞬の間によしなし事を頭が駆け巡って慌てる事ほんの数秒、突如私の体を何かがすり抜けていく感覚がありました。

陰陽五行に加えて光と闇。天地万物を創造し変質させ、そしてまた循環する母なる粒子。

手にした槍は魔力を通してもいないのに羽の様。

「・・・・・・」

「・・・・コクリ」

呆ける私に頷く千歳さん。
魔力の外部供給があるという事は、あの技もこの技も使い放題って事なわけでして・・・。

ゆっくりと歩み寄ってくる蒼い風。舞踏も武闘も共にした懐かしい人。

『――踊ろっか、可愛い人』

「――はい、蒼き太陽の君」

蒼い目を見つめ微笑を浮かべながらふわりと後方に跳躍し、喉元に迫った刃から身をかわす。
中空に漂う刹那に耳に届く旋風の疾り。

『描くは螺旋 聞けしは咆哮 全てを飲み込み刻め竜巻』

着地と同時に大地が弾けて紅い風が鋭角に跳ね飛ぶ。

『陰気やうやく重りて、露にごりて白色となれば、鶺鴒高く鳴く也!』

槍を持つ右手に蒼い薔薇が灯るとたちまち茨が槍を覆いつくし巨大な破砕槍が形成される。


『白虎第二宿、觜!』

激しい突風を撒き散らしながら雷を纏った破砕槍と竜巻がぶつかり合いせめぎ合い、蒼い花弁を散らして霧散した。

大量の魔力の凝縮・開放を伴ういわば奥の手を即時発動させた上、槍は軽いまま。

「あはははっ、すごい、すごいですっ・・・・はっ?!」

嬉しくなって相手も見ずに飛び跳ねてると大事な事を思い出しました。

「四象に守護されし豪族、紅家が三女。冬の戦場花、紅・梅花!いざ参ります!」


チーーーン


慌てて気取って口上あげるも完全にタイミング外しました・・・。

「・・・さ、最後の円舞、共に心ゆくまで!」

槍を構えなおして二人の天を見据える。

なお顔は真っ赤である。

■【双花】@千歳

マナ。
全ての一にして全ての零を司る概念の集合体。
形而上の問いにして形而下の解。

私はそれを愛と呼んだ。

あっけに取られた娘に頷きをもって返答する。
結界発動のための理論、構築は既に媒介自体に刻み込んであった。
後は結界が安定するまでの数秒間を調節すれば、仕合が終了するまでは保つだろう。
自分の命が絶たれるか、媒介が破壊される事が無ければ。

しかし、その数秒間こそが最大の課題であった。

闘士の詠唱を真正面から見据える。
無骨な気質に反して、その言葉はいつでも歌うように軽やか。
「ッ・・・」
接近しての攻撃に持ち込まれなかっただけでも運が勝ったとするべきかもしれない。
結界の調整と防御を同時に行えるほど、結界術に精通しているわけでもない。
そんなことは最初から『判りきっていた』からこそ、娘に前衛を任せるのだと言い切った。
多少の被弾は覚悟で、身代わりの蔦を展開させようとする、と。

「白虎第二宿、觜!」
剣士の一撃を跳躍にしていなし、その勢いを殺す事無く旋風に立ち向かう紅の舞。
どこまでも赤く、鈍い光を放つ大槍が瞬時に青薔薇の茨に覆われ、風の黒点に突きつけられる。
その間は一瞬。
青い花弁は風と共に打ち消しあったが、娘の様子に息切れヒトツも見られなかった。

「・・・あは」
無邪気に喜ぶ娘に、釣られるようにして乾いた笑みが零れる。
想像以上の効果と魔力供給を享受した娘のバイタリティに、驚きを隠せなかった。
しかし相手は待ってくれない。
いや、もしかしたら呆気に取られているかもしれないが、甘い相手では決して無い。

娘の後方から告げる。
「さて、これにて役はヒトツ。
ガチョウの羽根の扇子にはお気をつけなさることですね」
先の闘士の挑発には挑発で返しながらも。
長斧を地面から引き抜き、それを握ったまま右腕を向ける。
細く鋭く強靭な蔦が剣士を串刺しにしようと、上方から鋭く地面へ突き刺さった。
それが剣士に与えたダメージを見届ける間も無く、虎が大きく跳躍する。
その瞬間に蔦は千切れて塵となり消える。

あくまで娘を間に挟む陣形を崩さぬよう、しかしその場に留まり続ける愚策は犯せない。
闘士の追撃に備えるよう、新たな蔓草の束が右腕から生え出た。

■【双花】:梅

「・・・こほん」
恥ずかしさを誤魔化し、軽く咳払いを一つ。

戦闘は加速していく。意識は研ぎ澄まされていく。

相手の出方を待つ暇もなく、後方から頭上を越えて鋭い蔦の槍が飛ぶ。
とっさに槍先を蒼の剣士に向け一気に魔力を迸らせる。

「白虎第四宿、昴!」

ビシャァ!

幾筋もの雷が槍から放出され、蔦の着弾に合わせて蒼い太陽を絡めとらんとする。

雷の反動で仰け反った勢いのまま後方に小さく宙返りすると真っ直ぐ天狼に向かって走り出す。

あの時、京と同じ様に相対する二人。

話したい事が沢山あるけれど、ただ純粋に槍を突き込む。
ただそれだけで言葉を交わすよりもっと分かり合える気がする。

この人はそういう人。

「らうんどつー、ふぁいっ!、です、ふふっ」

瞳を合わせ、そう笑いかけると同時に大きく槍を振りかぶる。

超近接戦で勝ち目が無いのは、十分承知。あくまで槍の間合いから足元を左からなぎ払う。

勢いそのままに体を時計回りに回転させると、一撃即死の大槍の回転撃を胴に向けて放つ。

鋼鉄の大刃がゴヒュゥ!っと重厚な風鳴音を立てた。

■【双天】:リュク

白刃を、軽々と、それは軽々と飛びぬけて、皿には竜巻を蒼花と散らす娘の忌憚無さ。
初撃を躱されて続けて踏み込もうとした脚が、ぴたりと止まる。
それぞれに繰り出される技、その呼吸、

これは、拙い。
俺は――浮いている。

眉間に深い皺を刻み、思わずと吼えた。

「お前らなんで技の名前がそんな素敵に詩的なの!?
技の前になんかいい事言うのってそんなに大事なの!?」

A:大事です
言霊は世界と己を互いに干渉させる重要なファクターであり、その力を所有する者たちは言成すによって事象を成立させるのです

「あと俺以外全員リア充!」

A:(・(エ)・)

一人でひとしきり駄々を捏ねていたら上方と前方から鋭いツッコミならぬ鋭い蔓と雷撃が降って来た。

千歳、彼が怖いのは、柔と剛をタイムラグなしで使い分ける事。下手に刃を出せば絡め取られること享け合い、大きく距離をとって跳び退る。

梅花、彼女が怖いのは、多彩な彩を所持しながら為し事は酷く真っ直ぐな事。腰にさした銀色の刃を避雷針代わり地面に叩きつけ、雷条の余波を魔力通さぬ物質でできた剣で端から弾き返す。

そのまま横をすり抜けて背の相棒に向かっていく娘を眼の端、一歩前進して、まだ雷気を纏ったままの銀色を柄ごと蹴って引き抜き、正面に控える斧使いに向けてぶん投げ、その後ろを追走した。

「残念、ふられちゃった」

冗談めかして慰めて、と口の端笑ませながら、追撃はセイリオスではなく俺から。
一度地面を剣で派手に抉って礫を飛ばし、振り抜く剣圧を以ってそのひとつひとつを弾丸の如きに尖らせる。

「壱の太刀、――辻風ェッ!!」

※技の名前はパクリです

■【双天】:セイ

横殴りの竜巻は当主まで届く事なく、大刃の槍に食い荒らされる。
それを見届ければひゅう、と小さく口笛を挟んだ。

「…恐れ入った。そこまで力を持った槍だとは」

が、そこで相変わらず気にするポイントが異なるのは前に居る相棒か。

「言わなきゃ大概出せねぇんだっつのバーロィ!
 てか、爆発させたきゃ相手にやれよ相手に」

リア充爆発しろと自分まで巻き込まれても溜まらない。

「扇子揺れれば既にその手の内ってか」

目の前では、互いの前衛同士がすれ違う。
扇子を持つのは奥の当主、なれば今は相棒に任せて――

『らうんどつー、ふぁいっ!、です、ふふっ』
「選手交代、だな。…いいぜ、来やがれ!」


無邪気な笑みを浮かべた彼女へ、瞳が合わされば1つ頷き。
何時かの相対の続きとばかりに構えを取る。

槍の間合いから放たれる薙ぎ払い。
刀でも拳でも止める事はまず不可能。足元を払うそれを小さく跳躍して交わせば、地に足着くと同時に今度は胴元の高さへ刃が迫る。

「…ッ」

体を沈めるも跳躍に足のバネを縮めるも間に合わない。

そう判断すれば、掌を刃の腹へ弾くように当てると、その反動で体を浮かし刃と水平に回転させ刃の上へ身を乗せる。

通常の槍でなく、魔力により大刃へと可変した大きさだからこそ可能な曲芸。

後方へ運ばれるも瞬間の間、風が宿った拳を刃の腹へと叩き付ける。


―風神拳・爆旋一揆 零式―


そのまま地へ沈めんと殴りつけた反動で宙に浮けば一回転。
彼女の肩の高さを目掛けて空中回し蹴りを放った。

■【双花】@千歳

「あら、詠唱を簡略、再構築して一言で引き出せるようにしてあるだけですよぅ」
目の前の剣士の悩ましげな叫びを、唇を尖らせて軽くいなす。
異大陸の知人が得意とする手を真似てみたら、案外に上手くいったためコロシアムで愛用していた。

バックステップで避け娘の雷も機転により弾いた後、その剣の一本を投げつける。
羽虫を介して『視』てはいても、その動作に至る判断力、実行するための技量には驚きを隠せない。
攻撃と同時に行った、闘士の追撃を想定しての跳躍は正しかった。
しかしそれでも虎の片足には浅い傷が一閃。

「『この』私に慰めて欲しいだなんて、不遜ね」
軽口には軽口を。
追走の一瞬を刻んでの、笑みの応酬。

着地と同時に放たれたのは礫の弾丸。
「ん、ぐッ」
右腕から垂れていた蔦の束を、虎と当主の前方への楯にするも。
元より『防衛』ではなく『迎撃』を想定して用意してた蔦は、防御用にするには量と厚みが足りていない。
反して強度は使い捨ての防御用の蔦よりは高く、それが致命傷を防いでくれた。

からん、と。
穴だらけになり塵と化した蔦の束の中から、一本の剣が落ちる。
大陸で広く愛される名刀、氷雪の刃。
蔓草の中の仕込刀として当主がよく使う戦法だったが、読み違いが仇となった。

だが、踏み込まないと云うのであれば。
「・・・ッ、東征!!!」
瞬間、爆発するような、虎のスタートダッシュ。
一気に剣士までの距離が詰められ、それは、そう、長斧の間合い。

「でも、良うございますよ」

身を低くした当主はエネルギーの流れに逆らわない。
身体が起き上がる力のままに、背後から前方へ、下から上へ。
無骨な刃による縦の回転の一撃は、細い片腕だけで織り成す。
蔦の補助に加えて武具としては不向きな程に『軽く脆い』竜骨だからこそできる、離れ業。
そして遠心力を利用したまま、今度は両手でしっかりと掴み。

「ねぇ、あのダンスの続きをしましょう」

あなたが大陸を去ると決めた、色んな人が旅立った、寂しくも賑やかな十二月。
不確かな空間の中、踊ったね。
最後に残した忠告が温かかった、最後に成された仕返しが小気味良かった。
あなたを独占できる幸せに、胸が高鳴った。
楽しい、嬉しい、嬉しい、嬉しい、愛しい!!!
あふれ出る想いは当主に無邪気な笑みを形作り。

脳天を粉砕するためだけに、振り下ろした。

■【双天】:リュク

技の名前を叫ぶ件についての前後からのツッコミに、えーという顔をしておく。
やっぱり皆いいこと言わないと力が出ないらしい。

俺としては「ビーフ・ステーキ!」とか「パンチラ!」とか「そこでボケて!」とか叫んだらすっごい秘めた力みたいなの出せそうだけど

もっと浮いちゃうからしない。
リュクシースは 空気の 流れを読んだ!!(技テロップ)

とか一人脳内必殺技を繰り広げている間にも、戦局は移る。

「『この』私に慰めて欲しいだなんて、不遜ね」
「好きだろ、そういうの」

笑みを交わすのには相応の距離、彼を護る蔦が石の礫に削られていく向こうから、戦虎の駆る。

残りの距離が瞬きの間に巨大な斧が触れる寸前。

下からの斬撃に引くことなく、更に間合いをもう一歩詰める。
肩すれすれ、空を切り裂く音が直ぐ耳元で鋭く鳴って、蒼色の髪を引き千切る、
それよりも無邪気に笑う青年の眼の色に震え上がる。

「ねぇ、あのダンスの続きをしましょう」
「もっと凄いことされたいって?」

狂おしく思う、その情に方向性は無い。
プラスでもマイナスでもない、愛でも憎悪でもない、
或いは、その全てを同時に内包する、
純然たる感情のエネルギー。

振り下ろされる、重くしなやかなそれを、
横ではなく右手に縦に構えた刃の腹で受け止め、
刃一枚隔てて左腕を支えに押し留める。

「いいけど――折角なんだ。馬鹿やるなら多い方がいい、」

左腕の骨に入ったと思われるひび割れを無視して、
ゼロ距離で腹を狙って右足を蹴り上げた。

蹴りが命中して背後に吹っ飛ばせてもそうでなくても、
同時に飛び退ることで再度間合いを取る。
そのまま、横で紅と踊ってる相棒を呼んだ。

「セイリオス!俺ちょっと試して見たいことあるんだけど付き合え!」

■【双花】:梅

速さ威力共に最大限の一撃。
左右上下、どこに避けられたとしても更なる回転による追撃の連撃。

・・・のはずが、風纏う狼は大刃その物に飛び掛った。
次いで槍の柄から腕に伝わる激しい衝撃。

手から離れ爆砕音を立てて地に突き刺さる愛槍。

予想外の動きに翻弄されたまま宙に浮いたままの体に一閃が突き刺さる。

辛うじて両腕を差し挟むも軽々と吹き飛ばされ、砂煙を上げて転がった先でやっと体が止まった。

「あたた・・・・」

直撃を受けた痺れる左腕を摩りながら体を起こす。

追撃もせず離れた位置から此方を見据える彼。
その足元を指差しながら申し訳なさそうに笑いかける。

「えっと・・・それ、返して貰ってもいいですか?あはは・・・」

だって素手じゃどうにもならないですもん。

う〜ん、やっぱり幾ら魔力の供給を受けようと正面からの肉弾戦じゃ勝てないです。

觜で倒せないのは既に京でお試し済みですし・・・後は奥義の閃?
さて、どうしたものでしょう・・・。

等と思案しているとそこに届く声。

『セイリオス!俺ちょっと試して見たいことあるんだけど付き合え!』

小休止中のこちらと違って激しく殴り愛をされているご様子。

「ああ言ってますけど・・・どうしますか〜?、ふふっ」

セイリオスさんににこにこと問うて見たものの、あの二人が何かやるなら私も見てみたい。

対戦相手として付き合うに決まってます♪

あ、その前に槍・・・・(涙

■【双天】:セイ

槍が沈み彼女を武器から離し、間に入るようにして降り立つ。

『えっと・・・それ、返して貰ってもいいですか?あはは・・・』

追撃に備え、構え険しい顔になっていたのが解ける。

「…仕方ねぇな、梅花さんは槍ねぇとだし」

そうして、地に刺さった槍を取ろうとしたところで声がかかる。

『セイリオス!俺ちょっと試して見たいことあるんだけど付き合え!』

見れば、相棒はすぐ近くまで間合いを空け戻ってきていた。

「やれやれ、忙しいこって。…いいぜ、一口乗ろうじゃねぇか!」

そのまま槍は風に乗せて引き抜けば彼女の元へと届け、同時にリュクのすぐ近くへ飛び退る。

「…で、どうすんだ?」

ここから仕掛けるとなれば2人へゼロから攻め手を組む事になる。

何をたくらんでいるつもりなのだろうか。

■【双天】:リュク

「…で、どうすんだ?」
「簡単なこってすよ。誰でも思いつくような」

小休止、とばかりに互い引き、真隣に立った相棒に悪戯げに笑った。
羽根みたいに軽く、掌に馴染んだ透明な刃。
弧を描き振れば、身命に宿る飛竜の力がぶわ、と身から滲む。

「前、俺がお前から盗んだ技あっただろ、アレ、
それなりに使いこなせるようになったんだよね」

並んで背中合わせに軽く構え、花と月に向き直る。

「単純に重ね打ちするとどうなるか、試してみたくねぇ?」

前回と同じように、鋭い音を立てて剣を地面に突き立てれば、
二人を中心、爆風が巻き起こった。

向きは追い風、

「――今回は、金ちゃんナシでいこうぜ」

ちなみに俺は金色童子を金ちゃんと呼ぶ。

吹きすさぶ風が外気を遮蔽していく中、
相手にだけ届く声で呟いた。

「お前は『本気』を惜しまないバカだから、
ヒートアップすっとあれ起こすのに躊躇わないけどさ」

すい、と水平に挙げた刃、構えのふりして肘で相手の頭を小突く。

「その度、少しずつ沢山、命削ってんだろ。
全力で戦えないなら命なんていらないかも知れないけど、――さ」

嫁取るんならちったあ大事にしろよ、
今日の不足分は俺が貸す。

…とかは流石に恥ずかしいんでカットして。

「此度も先陣は俺、斯くも僥倖、ってな!」

加速する、翼で空を滑るように、両脚で地を蹴るように。
先ずは一人分の、風と龍脈、目一杯。

剣に集めて、固めて、ぶっ飛ばすだけの簡単そうで難しいお仕事、

――風神拳・爆旋一揆 零式

「……の、俺式ッ!!」

追撃を疑うことなく、対峙する双花に向けて風刃を振りぬく、
重ねて飛んだら、あの空は割れるだろうか。

■【双花】@千歳

「か、はっ・・・!!?」
零距離からの蹴りが腹部にめり込む。
きれいに入ったそれに対して、当主が飛ばされることは無かった。
決して落下することのないよう虎と当主の身体から生え絡み付いていた蔓草は、忠実にその役目を果たした。
しかし皮肉な事に、それは当主に比類なき苦しみをもたらす。

「げほ、ッ、あ、ぁ・・・」
巨躯の虎が全速力で駆け、当主自身もその勢いを殺す事無く長斧を振った。
そこに入った反撃は、強烈なカウンター効果を発揮する。
虎の上で半身を伏して咽こむ。
生理的な涙で視界が滲む。
吐き出す息に赤いものが混じる。
後方へ飛ばされたのであれば、もしくは鍛え上げられた腹筋があれば、それでもダメージはまだ軽く済んだかもしれない。
衝撃を逃すことも叶わない当主の薄い腹は、強靭な蹴りに対して対抗手段を持たなかった。

追撃は、無い。
足元には柄にひびの入った長斧しか見られない。
ようやく羽虫を介して『視』れば、向こうでも地面に転がされていた娘が起き上がる所だった。
何だか似た者同士だな、と浮かんで、気の抜けた笑みが口元を彩った。

「梅花、嬢」
虎に乗ったまま、槍を受け取った娘の元へと赴く。
「二人ともボロボロですねぇ、近距離ではやはり勝ち目がありません」
指で口元を拭いながら笑いかける。
様子を見る限りでは、小さな傷は多いようだが大事には至っていないようで、少し安心した。
それは。
「さて、それでは心してお聞きなさい」
女性として、尊敬する一人として、大好きな人としての心配ではない。
当主としての夏山千歳は、そういったものの見方をしない。
「策があります」
娘が未だ動くことが出来るという現状把握。
それこそが当主にとって、何よりも重視する見方だった。


さて、何の代償も無く行使できる力など、この世には存在しない。
知識には時間を、武術には鍛錬を、魔術には触媒を。
努力は勿論、時には才能という支払いを経て人は力を行使できるようになる。
根源からあふれ出す無限に等しい魔力を得るには何が必要か。
それは当主が当主であるための基盤、夏山千歳という呪を成り立たせる一の要素。
当主の『自我の領域』が、この結界の代償だった。

マナの根源そのものと契約を交わし。
輪廻転生の放棄、魂の束縛と引き換えに当主が望んだのは、夏山一族の『贖罪』の方法だった。
当主の魂を根源に差し出し、その代わりに根源そのもの・・・つまり扉とも言える存在が、魂に刻み付けられている。
娘、そして全体への魔力供給は、青年の魂を介した先から行われている。

根源から得る魔力は、あくまで副次的な要素でしかない。
それを最大限に利用したのが今回の戦法だった。

しかし扉を開けば開くほど、当主の魂・・・自我は根源に引き摺られるのは自明の理。
日常生活にさえ支障をきたすそれに、当主が対策をしていない筈が無かった。

彼の左耳の傷跡を隠す花飾りは、当主の身体から『生』えている。
その花々は全て、同化と内包の使役獣、青匂師が『食』べて得た生命力を、生前のままに具現化したものだった。

つまり当主は精霊を介し、食べた草花の生命力を欠損した自我の代替としてあてている。
この仕合中、左耳の花は何度も散っては咲いていた。
曼珠沙華、紫陽花、梔子、桜、朝顔、撫子、木蓮、沈丁花。
時にはかたくなに居座り、時には一秒と持たず、季節の経過と共に辿る筈の輪廻が展開された。
当主が今まで貯蓄してきた生命力を、この仕合へ惜しみなく投入していた。


今、当主の耳元を飾るのはデルフィニウム。
しかしそれも刻一刻と瑞々しさを失っていく。

「良いですか、彼らの一手は互いの得手からして制御された暴風である可能性が高い。
もしくは二人そろっての剣劇でしょうが、それをされればこれから成す策での勝ち目は三割程になります。
なので前者を想定しての策を授けます。
何、問題ありません、結局するべきことはシンプルに他ならないのですから」
彼女の手を引き、当主の前に座るよう虎に騎乗させる。
長斧はもう使い物にならないので、拾わなかった。
今、この場においてあの得物に役は無い。

「最初のように・・・はいかないかもしれませんが、彼らの初撃を払ってください。
供給のラグが起きぬよう、千歳の魔力も槍へと直接注ぎます。
大丈夫、あなたなら出来る」
背中越しに片手は手綱を、もう片手は娘の槍を握る。
「良うございますか、前はあなたに任せます。
あなたは何を心配する事も無く、初手を払えば、それで策は成る」
張り詰めた空気が、二人の間に流れた。

「と・・・その前に」
が、それまでの流れなんか一向に無視して、当主が手綱を放し。
おもむろに、血に汚れた指を娘の口に突っ込んだ。
目を白黒させているであろう娘に構う事無く、すぐに引き抜く。
「よし、五分程なら東征はあなたの思考を読み取って、あなたの思うまま従いますよ。
梅花嬢?聞いてます?」

そんな一幕があったものの、向こう側も相談が終わったらしい。
ふざけあっていたのもつかの間。

空気が変わる。

「はぁッ!!!」
先陣を切った剣士と同時に、虎が二人を乗せたまま駆け出す。
デルフィニウムの花を散らしながら、新たに金木犀の花を咲かせながら、そして散らしながら
娘の槍へ、溢れんばかりに魔力を注ぎながら、一直線。

――風神拳・爆旋一揆 零式

「・・・・・・の、俺式ッ!!」
防御など微塵も考えぬ出で立ちで、風の刃が振りぬかれる。
その一陣へ、彗星のように突っ込んだ。

■【双天】:セイ

『前、俺がお前から盗んだ技あっただろ、アレ、
それなりに使いこなせるようになったんだよね』

「――ほう」

目を見開く。
元々見よう見まねにして使われてた時点で威力は十分なもの。
会得は時間の問題だったが、改めて言われれば驚くものだ。


提案されたのはそこから予測された内だが、重ね打ち。

お前それ簡単に重ね打ちっていうけど合わせるのとかタイミングとか色々大変なんだぞオイ、と言う途中で

『――今回は、金ちゃんナシでいこうぜ』

その一言に、遮られた。

『お前は『本気』を惜しまないバカだから、
ヒートアップすっとあれ起こすのに躊躇わないけどさ』

「……」

金色童子。
それは、僅かな間だけ自らの身体能力における潜在的部分も含めた全てを引き出す力。
時に“火事場の―”と呼ばれるそれを常に解放し続ける、体への負担を一切顧みない手段。

『その度、少しずつ沢山、命削ってんだろ。
全力で戦えないなら命なんていらないかも知れないけど、――さ』

「…分った。今回はタッグマッチだしな、あれ使って先に時間制限でぶっ倒れても格好つきやしねぇし。じゃ、その分はアテにさせてもらうぞ」

構える。

『此度も先陣は俺、斯くも僥倖、ってな!』

先に飛び出したのは向こう。

「後追いは俺だ、須らく見届けろ!」

それに追随して右拳を握る。

吹き荒れる暴風は一点に集い、しかしてその中心点たる拳の周囲には“何もない”

――風神拳・爆旋一揆 零式

『・・・・・・の、俺式ッ!! 』

相棒の風刃が振るわれる。同時に向こうからも突っ込んでくるが、最早気にしない。

この機を逃せば先はなく、これで潰されるようであればそれまでの話。

「見せてやるぜ、進化した零式をッ」

それは何時かの風の剣士、アルヴァ=ウインドが会得した風を存在すら視認させぬ程に超密度へ圧縮する秘儀を模倣し応用した技術。


――風神拳・爆旋一揆 零式・極


「重ね放つは空を割き天を割く!風の拳、大嵐を超えて天嵐と成れ!」

拳を前方の風刃、その中心点へと殴りつけ解放する。
同時に叫ぶ、一人では絶対に放てぬその風の奥義を。

――風神拳・爆旋一揆 双天嵐零式

■【双花】:梅

『梅花嬢?聞いてます?』

「けふ、あ、はい!聞いてませんd、あ、いや、わかりましたっ!」

東征のふかふかの背の手触りと座り心地に心がどこかにすっ飛んでたなんて言えません。
そこに口に手を突っ込まれた結果が、先の意味不明な応えである。

でも心して聞いてた時の『策があります』と虎の背でにやけつつも『心配せず初手を払え』は心に刻みました。

彼の覇を吐く声と共に一直線に巨虎が駆け出す。
遠方に見えるは、風巻く蒼の剣士。

蒼い髪をなびかせて走るその体に文字通り一陣の風を纏わりつかせて行く。

大空を駆る竜の翼の様に。

『・・・・・・の、俺式ッ!!』

拳と剣の違いはあれども振り抜かれた竜の爪から見覚えのある一閃の風の刃が放たれた。

(あれを迎撃すれば・・・)

腰の鉄扇を振り開き、炎の風で薙ぎ払うべく魔力を充填していく。

とその時、剣士の肩越しに天狼の姿が目の端に映った。

風が吹き荒れてる様には見えないのに周りの空気が歪む程の超密度の風。

『重ね放つは空を割き天を割く!風の拳、大嵐を超えて天嵐と成れ!』

かつて京で受け切れなかった風の剛拳。
先行する初激を払いにいった瞬間にあれが追いついてくる。
抗する技を刹那に思い巡らせども私の持つ中にそれはなかった。

(駄目!)

荒れ狂う龍の如き暴風を前に、咄嗟に心で東征へ思考を向ける。

瞬間鋭い爪が大地に突き立ち、投げ出されそうな衝撃を伴って巨虎は臥龍ならぬ臥虎となる。

「朔風、木の葉払えば、地、始めて凍る! 玄武第7宿、壁(なまめ)!」

地に伏した虎を八角を刻んだ氷の亀甲が覆って行く。

「天地、閉塞すれば冬と成り、金盞、開き咲き香る! 玄武第3宿、女(うるき)!」

中空に瞬時に凝縮した水が人型を成し、やがて大きな女性の姿となると夏の日差しを反射する氷の亀を抱くようにその上に覆いかぶさった。

東方風の衣に身を包んだそれは、あたかも遠い昔に別たれた娘の母の様に。

(払えないなら・・・耐えます!)

ついぞ満足に習得出来なかった水属性・玄武の技なれど、溢れんばかりの供給を受けるただ今一時限りの輝きを。
posted by 夏山千歳 at 07:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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