2013年02月14日

■共通諸注意
この物語は千歳本筋RPです
本筋RPは全体の流れとして非人道的(具体的には近親間の婚姻、カニバリズム等)な描写、設定が含まれる場合があります(アップする際に冒頭注意として上げていきます)
背後様が在学中の方はご遠慮願います
性描写はありません
道徳の分別、現実と創作の区別のつく方、上記の非人道的描写をエンターテイメントと割り切れる方のみ、御覧になってください

尚、作品中のゲストキャラクター様には、既に確認と了解を得てアップしている事を明記しておきます

OL大陸SNSにて連載(酩酊する季節、生きているところの一年というもの、燃える)と書下ろしを一行


千歳本筋RP 第三部:壱話
2012年11月25〜12月11日筆


..
■酩酊する季節

コートの生地が重くなり、首周りを柔らかいもので包む。
そんな不意の須臾で冬が来たことを識る。

こちらに来てから南東和風の民族衣装はとんと着なくなった。
大陸崩壊に備えて身辺整理の一環として、数着を残して着るものは燃やしてしまったからだ。
正しくは最後の一着だけが残っていた。
しかし心臓部分に穴があき、たんぱく質のしみがこびりつき、それ以上に漂流の傷みに耐えられた代物ではなかった。
だから普段はシンプルなカッターシャツや着物で過ごしていた。

この大陸に流れ着き、解放され、住まいを提供してもらい、保護された。
心臓に穴があいた。
癒える事も悪化する事も無く、この包帯の下にひっそりと息づいていた。
左耳は元より、右耳もいつの間にか失っていた。
食物をとらなくても生きてゆけるようになった。
その代わりに睡眠の時間が長くなった。
夢らしい夢はあまり見ない。

去年の今頃は。
祭りの気配に沸き立つ中で、自分自身も抑えきれない高揚と興奮のまま、奔走していた。
飯事めいた役割を果たすためなら、どんなことだって出来た。
しないでいることが何よりも辛かった・・・結果としてそれは一度として成せなかった。

そう、冬が来る。
人生の五分の一を過ごした祭りが終わり、心寄せ合うような愛しいほどに弱い日々。

「・・・、・・」

散歩に出かけようか、と玄関へきびすを返そうとして。
彼女から、あまり遅くに出歩いてはならないと柔らかい制止がかけられていたことを思い出す。
小さく微笑んだ。
干渉される事を望み、干渉されるがままである事が、こんなにも胸の内を暖かくする。
見守っていただける。
鍵を預かっていてくださる。
私を閉じ込めていらっしゃる。
私を、このかごに、あの方が、この私を。

なんて嬉しいことだろう。
それを隠す事無く曝け出せる充足感。
やましい心が無いからこその安心感。
誓って言える、私は彼女に恋をしない、恋が出来ない。
だからこそ、この食道の壁に染み渡るアルコールのような酩酊。

しあわせだと、おもう。
きっと。

足取りはそのままキッチンへ向かいだす。
温かい紅茶を淹れて、彼女の部屋をノックしよう。
その前に彼の部屋にも差し入れよう、昼に作ったクッキーが瓶に保存されている筈だ。
こんな夜は出歩かない方が良い。

すみはじめた空気を貫く星や月のあかりを見たら、きっと私は死にたくなるのだから。



■生きているところの一年というもの

見送り続けた大陸での五年と少し。
もう見送るのが嫌で、見送られる側になりたくて、しかし手を引いて欲しかった。
聞き分けのよい良い子のまま、強い振りを見せて大丈夫だよと笑うことは深い絶望を与えやしないかと。
要望を口にせぬ生き物の察するところを予測するばかりで外れれば傷つくリスクをもって、どうして繰り返せようか。
ならば笑っていただけたのだとしたら、私はそれを寂しいと思うことを、ようやく知った。

不要であることを恐れ続けた。
庇護したいと思える相手には、しかし本質的に私は何も期待をしなかった。
期待をしていなければ、離れていっても傷つきはしない。
悲しさも寂しさもあたたかく美しい想い出に包んで大事にできるから。
必要としていただける夏山千歳でいられるから。

死のうと思えるなら、何だって出来る。
そう仰っていただけた、そう仰っていただけるだけの価値が、必要という価値が、まだあるのだと。
それに縋り付く。
そうして座り込む。
しかしね、違うのだよ。
死にたいと口にする時、もう自分の背中に風景は広がっていないんだ。
真っ白なんだ、無責任でありたいんだ。

この一年。
多くのものを失った。
暖かな居場所、家族との距離、友人、恋をした人、愛した人。
手に入れたものもあった。
変わらない友人、新しい友人、新しい居場所、新しい保護者。
環境は変わる。
それは環境が変わったから。
ここから先はこの手で環境を動かさねば、環境は変わらない。
そう、だけれど、しかし。

鳥篭に閉じ込めて欲しいと未だ願う。
真っ暗闇の中で縛り付けて欲しいと未だ願う。
決めることが億劫なのだと、ついに呟く。
混乱の極みにあって、時折ともる温かなもので寒さを誤魔化す。
つま先ばかりを見詰める。

そして澄んだ夜空に浮かぶ月が美しいことを直視できないのだと、知る。



■燃える

少し山奥へ脚を踏み入れるだけで満天の星々が私を覆い尽くした。
今にも消えそうな月が輪郭の境界を導き出す。
人々の営みは遠い。
しんと刺す早朝に近い寒気、それを越してなお見詰めていたい。
出来ることなら寝そべって、出来ることなら誰かの隣で。

他愛のない話をしたいと思った。
叶わぬ夢ばかりが魂を燃やした。



■そして冬が終わる

ある男の話をしよう。




→To be continued 『蘇生』
posted by 夏山千歳 at 17:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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