2012年09月10日

little snow & end snow world.




..
■夢か現か幻か。:白藤
 
まだ煌めく星達の踊るホールを囲む社交場へ、狐と結晶妖精は再び手を繋いで現れた。
だが今度はホールへは向かわず、そっとカウンターの奥で寄り添う。
狐はするりとチェアに滑り込み、極自然に自分の膝の上に結晶妖精を招いて抱き支えると、

「…来るかな?」

彼女の耳元にそぅっと囁きを落とした。

■夢か現か幻か。:ユキ

手を繋いで並んでというよりは狐に手を引かれて来た結晶妖精。
抱えられると胸に頭を預けた。
表情はいつもに増して硬く、黒曜の瞳は伏せがち。

「…来るかな?」
その問いかけのような独り言のような囁きに答えることはできない。
大切なそれに安易に憶測もできない。
だいじょうぶ、と保証出来るのは自分の気持ちだけ。

狐が撫でると、もう一度頭をうずめた。
淑女が子供になったように。
頭と心、理解と感情が折り合いをつけられない、子供だった。


■そのどれだとしても、此処に在るもの。:白藤

落とした囁きに返答は無かった。
顔を伏せる彼女の頭をただ、優しく撫でる。

「大丈夫」

さっき貰った言葉を、返すように。
柔らかく、柔らかく、呟いた。

来るか来ないか、じゃなくて。
二人の気持ちは、変わらなくて。
ただ此処に在るがまま。

「大丈夫」

二人で紡いだ旋律は、その気持ちは、変わらないから。

「大好きだよ、ユキちゃん」

額に降らせる愛のキス。
大切を抱きしめて、時を待つ。
それが、始まりか、終わりかはわからないけれど。

■@千歳

ずいぶんと待たせてしまった。
遠くから見つめる先には、カウンター奥のチェアに座る二つの影。
もしかしたらうつらうつらと船をこいでいるかもしれない。
そのくらいの時間を、待たせてしまった。

音も無く近寄り、二人の正面のチェアに座る。
多少の高低差はあるけれど、それでも普段よりはずっと近い目線。
二人が気付くのを待つ。
ヴェールの向こうから、そっと微笑みかける。
「遅くなって、ごめんなさい」

その瞳が映し出す世界の彩が美しいのは、あなた方の心が美しいからに他なりません。
「良い一時を過ごせましたか」
蜃気楼のように見つめる二人が、子供のようで少しおかしいようで。
それでいて決して目を離すことを許さない哀切を、強く感じた。
「お手紙をありがとう。
大切に拝読させていただきました」
嫉妬の炎は絶えること無く胸の中の火種を焼き尽くさんと、燃え盛る。
目の前の、純粋すぎる二人にさえ。
あまりの罪深さから、目を合わせるのが辛かった。

「選んでいただいて、ありがとう」
目を瞑れば思い描ける。
永寿と祝福の鐘の音、奇跡に等しい真夏の六花。
網膜に映る、鼓膜に訴える、会場を包み込む、それら二つを知覚できなかった。
体は知覚している筈なのに、心が知覚していなかった。
「手を」

私に鐘の音は聞こえない。
私に夏の雪は見えない。

「手を取っていただけますか」
この命の。
燃え尽きる先に望んだ夢だけが、最早、私というパンドラの箱に残された希望だった。
この皮の中には、絶望と悪徳ばかりが詰まっている。
臆病な二人が振り絞った勇気に、手を伸ばすだけの強さも残っていなかった。
「連れて行ってくださいますか」

光無き 二つの賽は 盲目の
愛の寄る辺に 雪を降らせる

我侭ばかりでごめんなさい、と。
ついに私は目を伏せて、静かな審判の時を待った。

■夏に白き雪の藤花を咲かす:ユキ

社交場の片隅で1つの塊のように寄り添う白と青。
その名の意に副えないのが申し訳ないと、ひっそり。
ただ1人を待っていた。

最初に気付いたのは青。
いつの間にかカーテンの隙間から差し込む月光のように、待ち人は目の前に。
ヴェールの向こう側からぽつりぽつりと降る聞き慣れた声はどこか遠く、ぼんやりしながらただ身体にしみこむに任せる。

「手を取っていただけますか」

それは私たちの望み。
あなたも望んでくださるの?
あなたが望むなら、私たちはいつでも。いつだって。


青の少女は手を伸ばす。
ヴェールが、瞼が隔てて貴方が遠い。
ただ一度名前を呼べばいいのに。

■夏に白き雪の藤花を咲かす:白藤

青い心がさざめく様子に、白の微睡みは解かれた。
抱く青の向こうに感じる、緑の大樹の気配。
きっとまん丸の黒曜の瞳が四つ、彼を見つめただろう。
少なくとも白の狐は、ことを理解するのに少し、かかった。

ああ。
来て、くれたんだ。

自然と小さな笑みが零れる。
青の姫君もその瞳に頬に唇に、驚きと、幸せと、そして期待と未だ不安を忍ばせている。
貴女が声にしなくても。
例えその表情が拙いものだとしても。
きっと彼にもその全てが伝わっているだろう。
その証拠に、彼は目を逸らさない。
…いいえ、きっと彼の理解は、白の狐以上。
だって二人は今までだって、寄り添ってきたのだから。

鐘の音が遠くに聞こえる。
視界の端に煌く六花が映る。
けれど、狐はそれの意味を知らず、故に理解もせず。
それでも、身を寄せることを許してくれた愛しい大樹、全てを捧ぐ存在、その人が眼前にある奇跡を享受した。

「手を取っていただけますか」

それは俺たちの望み。
同じ気持ちを詠ってくれるの?
あなたが望むなら、俺たちはいつでも。いつだって。

「連れて行ってくださいますか」

それをあなたが許してくれるのなら、どこへだって、どこまでだって。
あなたへの愛。
あなたとの愛。
一緒に抱いて、白と、青と。
あなたの傍に。あなたと共に。

大樹へ手を伸ばした姫の不安を、その瞳へ優しく口付けて掠め取る。
そうしてすぐに、重さを感じさせない彼女を、大樹へと預けた。
彼が意味を理解して、確実に彼女をその腕で掬えるタイミングで。
わざと、空中で彼女を解放することで、強引に、でも自然に。

そして狐は、大樹に抱かれた姫の瞳に映る彩に、笑みを深め。
どざくさに紛れて薄いヴェール越しの大樹の頬にも、唇を寄せた。

それから、あれやこれやに対する何故もどうしても出ないうちにと、
大樹の纏う上質なアオザイの生地を、傷をつけぬよう優しく引いて彼を立たせると、
青を抱いたままのその腰を後ろから押しながら移動して、社交場を後にした。

どうせなら、どうせなら。
―――世界の中心で愛を叫ぶんだ!

■今一度、一緒に踊ってくださる?と。:夏雪藤の、藤

そこで紳士に抱きついてるじゃんとかそういうのは野暮なお話。
全部星の瞬きが見せた触れられる夢なのです(ぇ

そんなわけで国外社交場に改めて舞い降りた三人をご紹介

一人はlumen lunae、緑の大樹、せいたかのっぽさん、夏山千歳
その腕に青雪の姫を抱き納め、強引に下された判決にまだ少し驚いておいででしょうか

一人はblue material、青雪の姫、伸縮自在の結晶妖精、ユキ・トーカ
大樹の腕に抱かれ、その黒曜の瞳に言葉に変えられぬ感情を湛えておいでです

一人は未だ星の名も無く、今後も刻まれる予定無き藤香纏う白の狐、白藤
大樹の腰を後ろから捕らえ、一人ニコニコと幸せそうにしております

宴が始まると聞いたときから。ずっとこれが願いだったの。
貴方と共に、と。
でも言い出せなかった。
共に居た時間の短い自分には、きっと隣は相応しくないだろう、と。

同じ気持ち、でもきっと俺よりずっと深い気持ちで居ただろう貴女。
手を取ってくれて有難う。手を取らせてくれて有難う。
貴女への愛。貴女との愛。沢山の新しい気持ちに、気づかせてくれて有難う。

国外社交場の端で踵を鳴らして、白く青い小さな円い舞台を。
それは新たな五線譜を刻む為のもの。
舞台の端で白の狐は二人に手を伸ばす。
さあ、今度は、三人で、と。

今一度問う、一緒に踊ってくださる?

■little snow & end snow world.@『夏』雪藤

腕には全く重さを感じない結晶生物の少女。
戸惑う私の腰を抱くのは、隣に住む白狐の青年。
半ば強引に連れられたホールでようやく離され、少女を抱き上げたままの私と向かい合う。

手を伸ばす。
その瞳が問いかける。

あぁ、思い出す、あの冬の日。
返答を拒絶した、選択をしなかった、椿の護る傍らで。

手を取り返す。
その躊躇の無さは、隷従にも等しい無選択の証。
ごめんなさい、と吐息だけで呟く。
私は、あなた方の慈悲深く愛情に満ちた審判を言い訳に、このホールに降り立った。

右手は少女を、左手は青年を。
軽やかで細かいステップを描く、少女の身体が中空に舞う。
高く羽ばたく少女と手を繋ぎ、ターン。
向き直った青年に腰を取られて、リードされる。
ふわりと離れた隙に、青年と少女が一瞬の逢瀬を重ね。
またも三人、それぞれの手を取り。
円になる、縁のまま。

オペラの裾が靡く、雪紋様のパレオが翻る、月金色のヴェールが広がる。
二人に対して恋を感じたことは無かった。
逆もまた然り。

ユキ嬢。
沢山居た友達が一人、また一人とこの大陸を去って。
最後に二人取り残されたね、寂しかったね。
あなたの勇気を私は踏みにじった。

白藤殿。
水道になってくれると仰っていただいて、ありがとう。
家族のように過ごした半年間。
信仰に等しいその愛に私は応えられなかった。


愛を、溢れる程の愛に。
posted by 夏山千歳 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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