2012年09月07日

君は愛の娘、私はマナの大樹になる




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■君は愛の娘、私はマナの大樹になる@千歳

開幕宣言を告げてから一人、ソファに座り込む。
ペア発表にざわめく会場を、どこか遠い心持で眺めていた。
そうしてようやく、私は初めて個人として今此処に居るという事実に気付く。

嬉しい事も、悲しい事も、あまりに沢山ありすぎて。
自分の欲望が膨らんで止まらなくなるのを危惧した。
だから皆と共に遊びたいのも本心ながら、それを見つめなおす場としてチームを結成した。
君は共に居てくれた。

君は。
一番最初の嘆きに寄り添ってくれた時から、ずっと耳を欹てて。
詰まった喉の奥からようやく零した言葉を拾い上げて、勇気付けてくれた、慰めてくれた。
笑顔をくれた。

「・・・、・・」

何時からか、何時だって。
降り積もる感情が淵を越えて、痛くて、泣いちゃいそうで。
どうにか堪えていたけれど、もう駄目みたいなの。

懇願するような視線の先には、リボンの結ばれた白い尻尾。
ふらりと立ち上がり、その手を強く、強く握る。
かがみこんで額をあわせて目を閉じた。
薄い香水と彼女の髪の香りから、溢れるマナの流れを感じた。

閉ざした心にさえ染み込む。
あなたの愛は、こんなにも優しい。

そっと離れて、弱々しく微笑んだ。
そうしてようやく握った手を引き、ダンスホールに踏み出す。

あぁ、きれいだねぇ、リッツィ。

言葉にならない想いさえ伝わっていると信じている。
信じることができるだけの勇気を、あなたがくれた。

■大樹に寄り添い愛を謳う:リン

ペア発表に、思わずぴたりと立ち止まり
その場で祈るように自分の胸元に手を置いた。

あの時、あの声を聞いたとき、何も考えずにただ体が動いた。
いまでも、本当によかったと心から思ってる。
あれからずっとずっと、兄妹のように共にいた気がする。

泣いて、笑って、過ごしていく日々は
とてもとても優しくて、大好きで、愛しくて。

貴方からもらったものも、沢山あった

苦しくて泣きたくて仕方がないときも
悲しくて辛くてどうしようもないときも

隣にいて、大切な言葉をくれた。

あなたが愛なら、愛はあなた。
私が愛なら、愛は私。
あなたと私は、きっと、一緒。

そう響いた心の音色は、いまもちゃんと。

探すこともなく、何処にいるのか分かるかのように
彼の元へと真っ直ぐに歩み寄る。
ふと、視線が絡んだ。

―うん、大丈夫。大丈夫。

その手を強く握り返して、同じように目を閉じて
額の温もりを感じながら、小さく白い尾を揺らし
ただただ、彼の心を聴く。

弱々しく微笑む姿に、耳を一度だけ動かして
ダンスホールへと共に歩き出す。

大丈夫、全部伝わってるのよ。だから―

繋いだ手を一度離してくるりとターン
そしてふわりと、彼を抱きしめた。

2、3度その背を軽く叩くと
再びその手を取って、いつもの笑顔で微笑んだ。

■@千歳

ステップを踏む、軽やかに、高らかに。

根性の根源を知りたいがために欲望を暴いて。
それでも呆れる事無く傍に居てくれた。
君に嫌われたら私は泣き崩れてしまう。
そう夢想する事もあるけれど。

曲の合間の不意を付いて、細い身体に両腕を回す。
強く、強く、抱き上げながら一回転。
とんと降ろして、再び金のホールを二人で翔る。

大丈夫、
君の愛は途切れる事無く、大樹の根元で響き渡る。
私はその謳に慰められるんだ。

人々の魂の輝きが斉唱となって、永寿を満たす。
きれいだねぇ。
私には遠い世界だからこそ強く思う。

手を離す。

ありがとう、いっておいでね。
二人で何時までも、幸せにね。

リッツィ。
posted by 夏山千歳 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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