2012年01月04日

xxxxx xx xx.




..

■過去へのリスペクト、そして愛しき今のために:灯
 
「何か次のお好みはあるかな?」

スタンさんに訊ねてみる。
自分は存外に安酒好みなもので、人様にお勧めし辛いのだ。
むしろ知らない酒を教えて貰う方が―などと公私混同しつつ、
グラスを磨きながら社交場を見渡す。

――そういえば、手合わせを申し込まれたっけな

梅花嬢は何処だろう。

彼女のレベルは92、立派な魔族傭兵だ。
うん、懐かしのしね団ガチコロスタイルで良かったら
喜んでお相手させていただこうかと思うんだが。

しね団ガチコロのルール

それは堂々、素手&全裸(女性は葉っぱ3枚可)、魔法無しスキル無し
文字通り、ガチな闘いだ。

…む。
どこぞの蔓青年から鋭い視線の刺さる気配が(超待つ

□:灯

「わかったわかったから!」

どこからともなく視線を感じ、
カウンターの中から明後日の方向に叫んでみた。

「プラス、コート1枚許可しようじゃないか。
 俺も白衣は着ていくからいいだろう?
 健全な諸君の前で流石に――」

天からタライが落ちてきた。

■さて何か腹に入れようか:h

ようやく気分も落ち着いてきたところで
名を呼ぶ涼やかな声音に顔を上げれば落ち着いた臙脂色。

「これは千歳殿。
こんばんは、良い夜ですね。
俺で良ければ喜んで、…そういえばこうしてお話した事は無かったな。」

どうぞと隣へ促して。
脳裏を過ぎる何時ぞやの緊縛姿に一瞬生暖かい笑みが漏れるも
目前の紳士然とした佇まいとは結び付かず、
見た目にはよらないものだと小さく独りごちた。(

彼の手元に気付いて
己の持つカクテルを、冗談交じりに軽く掲げてみせる。

「まずは乾杯、素晴らしい夜とこの出会いと
それとエージュと…なんだ沢山あって絞れないな」

■林檎賛歌@千歳

「ふふ、良い一時を過ごされているなら幸いです」
楽にしていた帽子の方が座りなおす。
小さく礼を告げて、促すままに隣に座る。

落ち着いた物腰に潜む破天荒さ。
異国情緒の中、僅かに粗野な匂いがする。
「不思議な方だと思っておりました。
千歳は、その時点において理解できないものへの興味が、強いから」
そっと見合わせた顔に形容しがたい微妙なものを感じ取り。

そういえばこの人、成人男性の緊縛姿を見てうっとりしてたよな。

なんてアレを含めた笑顔に作り変えたりする一幕もあったものの。
少し困ったような、嬉しげな声の後を紡ぎ。
「そうですね、それと、ここに居た全ての方々に」
グラスを鳴らし、乾杯を。

ふと、どこからか穏やかならぬ内容を聞いた気がして。
そちらに一瞬、視線を送ったりしながらも。

「そうだ、途中で給仕さんから美味しそうなものを頂いたのですよ!
オススメはアボカドとサーモンですって」
隠し持っていた皿を手近なテーブルに置く。
数種類のカナッペだけではなく、そこには小ぶりのおはぎも乗っている。
唐突におはぎである。
何故、という顔で見られた。

「えへへへ」
林檎とミントの香りの中、それはそれは幸せそうに笑う。
駆けつけ三杯目でテンションが上がる程度にアルコールに弱い青年は、今や立派な酔っ払いであった。

■林檎とおはぎと酔っ払いと:h

「その好奇の対象というわけか、成程
しかし俺には貴方の方が不思議だ
何故そんな…」

純粋な子供のように無防備な
しかしその奥に何百何千とも思える様々な深い色を宿しているのか。

「――いや、何でも」

互いに無いものを見つけたのだろう。
これだから旅は面白いのだと、
嬉しそうに林檎の香りの杯を交わした。

そして並べられる料理の美味そうなこと
腹が減っていたこともあり、思わず身を乗り出す。

「ほう、アボガドとサーモンと…
…なんだこの黒い塊は千歳どn
な…既に出来上がっておられr」

伺い見た千歳殿の幸せそうな笑顔につられて笑みを返す異邦人は
あんこは饅頭と大福しか知らないのであった(

■追憶@千歳

「その通り、好奇心は猫をも殺す、とは申しますけれどね。
それで殺されるなら千歳は本望ですから」
仄かに暗い色を宿す瞳は、しかして貪欲なる緑の目。
成程と頷く声に、唇に指を当てて悪戯に笑った。

続く言葉には驚きながらも、にこにこと受け流す。
その後は、小さな狂乱の宴がそこにあった。
「ほう、アボガドとサーモンと・・・」
「とろけちゃう口どけ!流石は宮廷料理人!」
「・・・なんだこの黒い塊は千歳どn」
「何も恐れることはございません、ささ、ぐぐっと!」
「な・・・既に出来上がっておられr」
「一揆!一揆!」
「それは一揆ちg」
惨劇であった。

一時を置いて。
「そうだ、野暮用なのですけれど、よろしければ付き合っていただけます?」
酔いも適度に落ち着いて、良い塩梅の青年。
時に煙管を用いて演舞らしきものを見せたり、時に互いの旅路を語り合ったりしていた不意の時間。
やや強引に帽子の方の手を取って移動する。

そこは、あまり人のいない小さなテラス。
お気に入りなのです、と笑いかけて、懐から手紙を取り出した。
それは名も無い一通の招待状。
「あの方は緑色がいっとうお好きでした」
手すりを利用して、器用に折り畳む。
「何度かお誘いした事もありましたっけね、そういえば」
厚みにやや苦闘しながらも、丁寧な手つきで出来上がっていく。

「でも終ぞ、この地を踏むことは無かった、方でした」

目を瞑る。
瞼の裏に思い浮かぶ、若い顔。
大人の顔と子供の顔がくるくると入れ替わるのには、いつも戸惑うと。
あなたはそう言っていたね、椿の護る傍らで。

白い指先が摘むのは、緑色の紙飛行機がヒトツ。
「忘れないってね、決めたの」
幾千億の星の巡りを越えて、過去も未来も内包した今という一時。
「忘れたくないの、です。
だから野暮用ですけれど、見ていて」
ひねるだけで振り向き、微笑む。

それを静かな大気の中、そっと開放する。
凪いだ冬の夜、一陣の・・・白い小鳥のような・・・風が吹きぬけて。
紙飛行機は、ただあるがままに、天空へと解き放たれた。

■空に一番近い場所:リン
 
ANさまの無事と、ウルちゃんの走り去る姿を見送って
猫は思いついたようにテラスのほうを見る。

「ジノくん、ウルちゃんが戻るまで猫ちょっと空見てくるのーよ!」

そう告げると、いってらっしゃいと手を振る彼に
全力で手を振り返して、猫は空を目指す。

テラスへ出ると、そのまま猫は軽やかに上へと跳んだ。
それは空に近い場所への近道。

難なく辿り着いたそこへと座り込むと、猫は空へと手を伸ばす。

下から聞こえる、楽しそうな笑い声。

心に響くのは、幼馴染の優しい声。


「―――ねえ、聴こえていますか?」


小さく笑うと、伸ばした手をゆっくり下ろし
空を見上げたまま、そっと歌を風に乗せる。

■xxxxx xx xx. @千歳

赤毛の娘とのダンスは、大体の他のペアよりは少し早めに終わった。
青年の状態が芳しく無く、娘が気遣った結果だった。
それでも楽しかった、と心底思う。
小さく囁かれた言葉に青年は笑みを零した。

ソファに身を預ける。
看病を申し出る娘に、挨拶に回っておいでと勧めて。
今は一人、社交場から少し離れたソファに居た。

給仕にお冷を、と頼み、朱に彩られた手の甲を額に置く。
身体が芯から燃えるようだ、手指がぽかぽかしていて血色が良い。
頬が火照って、頭が重い。
喉が、渇いているんだ。

高すぎる背丈ゆえか、この青年は体温が低い。
慣れない高温は静かに蝕む。
先ほどまで踊っていたから、だけではない。

癒えたとは言え、あくまでその場しのぎのものであり、完璧では無かった。
短時間でも重傷を負ったショックが原因で身体が熱を持っていた。


生きろ、と、君は言ったね。


グラスを受け取る。
一気に煽りたい気持ちを抑えて、少しずつ飲み干す。
冷たい水が食道から胃へと落ちていくのがわかった。
ミントの香りが鼻を抜ける。
思い出す、唇に当たるガラスの薄さ。
芳香で瑞々しい林檎、つんとさすアルコール。
雪の薫りを。

「――・・・・・」

冷たい水を、もう一杯。
そう告げたかったが、声にならない。
誰も居ないのを、これ幸いとソファに横たわる。

長年、人々を受け止め続けてきた柔かさを頬に感じて、何故だか泣きたくなる。
遠くで誰かが踊っている靴音が、ソファの猫脚を辿って右耳に吸収される。

水を下さい。
声にならない。
そこは遠く離れていて、しかし皆の気配が感じられる場所。
煌びやかな遠景が薄れていく。
優しい暗闇が忍び寄った。

冷たい水を、もう一杯、ください。
浮かされた熱に喉を震わせて。
しかして言葉にならない切望を聞き届ける人は、いない。
「・・、・・・・」
シャンデリアの放つ光が、大きな大きな影を生み。
断裂する世界の中で、確かに届けられた願い。

「・・・水、を」

かすれた声が、大気中に溶けて消えた。

■自由という選択:リン

「さ、むっ!もーむり、寒すぎるのーよー!」

空を見上げて歌っていた猫は
夜風を全力で浴びて寒さに震えながら城内へと戻ってきていた。

冷え切る体を両腕で抱きしめ、何か温かいものをと辺りを見渡す。

「…ぅん?」

ふと、視界に入ったのは少し離れた場所にあるソファで眠る背の高い青年の姿。
傍らにあるはずの彼女の姿がないのは、席を外しているからか。

こんなところで寝てるだなんて。
そんなことを思いながら、ゆっくり近づき、その顔を覗き込む。
苦しそうに眉をひそめて眠る姿がとても辛そうで
冷えた己の手をそっと額に当ててみる。

(…熱、い?)

すぐ傍には空になったグラス。
額から手をはなすと、近くにいた人造兵へと声をかける。

準備してもらったのは、水と、そして一枚の葉。

起こすのはさすがに、という猫の小さな思いやり。

その葉に少量の水を映して、熱に浮かされる彼の口元へと運ぶ。

(これで起きてしまっては結局元も子もないのだけれど)

そんなことを思いつつ、葉先で軽く唇をつつき
反射的に少し開いた時に、含みすぎないようゆっくり流し込む。

微弱ながら、熱さましの効果もあるその葉。
葉をすりつぶしたりしたわけではないから
あまり効果は期待できないけれど。

温かな陽だまりのような、笑顔の似合う彼女が戻るまで
少しかわりにここにいようかと、友人の眠るソファの角に凭れかかる。

(あ、お水と一緒に猫も何か温かいもの頼めばよかったのよ)

尻尾をゆらゆら揺らしつつ、猫は遠くにいる人造兵を見つめた。
posted by 夏山千歳 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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