2012年01月11日

美しく去った過ぎし日を思う

for ルーディリア


..

■:ルディ

どこか頼りなげに佇む、深緑纏う長身の青年に
すすす、と背後から静かに近付き思い切りタックル。
「ちーとーせ、さんっ」

背の高いこの人では、きっと振り向いても姿は見え辛いでしょう
そう思いつつも顔を上げてにこー、と満面の笑みを浮かべる。
「ね、千歳さん、お約束ですの!
私と踊ってくださいな?」

マイムマイムで皆と一緒に踊るのも楽しいけれど
貴方とのファーストダンスのように
もう一度、向き合って一対一でも踊りたかったから
嫌だとおっしゃっても離しません、とぎぅぅーっと服を握り締めた。

■美しく去った過ぎし日を思う@千歳

「ちーとーせ、さんっ」
背後からの急な衝撃に、心臓が跳ねる。
怯えを滲ませた瞳は、しかし聞きなれた声に落ち着きを取り戻した。
顔だけで振り返る。
肩越しには水色のドレス、青薔薇の髪飾り、暁の羽根。
金色の笑顔。

天の川の君。
初めて参加した宴で初めてペアとなった、まことのファーストダンス。
今でこそ落ち着いた所作でリードする青年だったが、あの頃は緊張の連続だった。
殆どが見知らぬ人々、物語の中でしか知らなかったダンス、煌びやかな王宮。
その全ての始まりが、あなただった。

「・・・約、束」
もう一度、踊りたいと何度か口にして。
その願いも、胸の奥底で静かに眠るだけの約束になるのだろうと、思っていた。
「うん・・・お約束、でしたね」
駄々をこねる子供のように・・・その中に、確かな思いやりと優しさを込めて・・・服を握り締める手に、上からそっと触れる。
それだけで通じる。

手が離されて振り返り一拍、ぎゅっと抱きしめた。
そういえば一昨年もハプニングから抱きとめたことがあったね。
会議の時だって、喜びのあまりに抱擁を交わしたことが何度かあった。
でも今度ばかりは、意志を持って腕の中に収める。
震える指先が、胸の中の温もりに解かされる。

直ぐに離し、交わる視線、床を蹴って踊りだした。
極上の笑顔につられて浮かべる笑みは何色かな。

周囲からしたら仲睦まじい男女にも見えるかもしれない。
だが互いの間に恋慕の情があったことは一度として無かった。
青年の側からは、今、この時も、溢れるほどの尊敬と感謝を抱いている。
友達だと、言っても良いのかな。

一、二、三のリズムを越えて歌う。
月明かりが、木漏れ日が、朝の陽光が。
あまたの星の光が照らして、暗い夜だって指し示す。
歌う。
いつかあなたが言っていた、悲しく美しい日々の記憶を愛した歌を。
posted by 夏山千歳 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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