2012年01月09日

あなたはマナの娘、そして私は大樹になる

for リンセ・ワーミー


..

■:リン

他の誰と踊っていようと、他の誰かとも踊れる幻想の狭間。

誰の手もとれるそれは、幻であり夢である。そして願い。

けれど、全てが真実であり現実。そして愛。

白の猫は、ゆっくりと何処までも広がるその空間を歩き
ふと、立ち止まる。

踊りたい人がいる。幸せを願う人がいる。届くだろうか。

…聞こえてる、きっと。

届くと。

答えてくれると信じてる。

「千歳さま。踊ろう?」

大丈夫。

そう願いを乗せてふわりと笑い、そっと狭間に手を伸ばす。

■マナ@千歳

あなたは愛を振りまく少女。
どれだけ、その優しさに救われただろう、心癒えただろう。
何時だってあどけない口調の中に、ただただ滲むような優しさがあった。

「千歳さま。踊ろう?」
「うん」

多分、どこにだって愛はあって、あなたはそれを知っている人。
求められたら限りなく与えられて、求められなければ、そこに愛は存在できない。

「リンセ嬢、かわいいかわいいねこねこ」

触れた手を握り返して、靴底がそっと床を離れる。
「かわいい、かわいい、大切な友達」

あなたが愛なら、愛はあなた。
私が愛なら、愛は私。
あなたと私は、きっと、一緒。

ね、あなたにも私の愛が伝わるかな。

「大切な、リッツィ」

■大切な:リン

人は誰も愛さなくても、生きていける。
けれど、愛すれば豊かになる。

家族、恋人、友達。

それぞれがきっと『特別』で
心から愛して生きていく。

「大切な、リッツィ」

握り返された手をそっともう片方の手で包み込む。

大丈夫、伝わってる。

言葉にしなくとも、伝わるものが
ちゃんとこの世界にはあるのだと。

「ありがとう。千歳さま」

あたしの大切な大切な友達。

猫は破顔し、青年と共にフロアへと歩き出す。

■@千歳

きっと他の人は驚いたと、思う。
元々、人当たりの良い同士である白猫と青年ではあったが。
ある日を境に、急に親しくなりだした。
そこに流れる空気は甘えん坊だけど明るい妹と、頼りないけど優しい兄のよう。

きっかけは本当に些細。
知る人ぞ知る物語を、互い、知っていた、それだけ。
しかしてその物語は、互いの心に深く根付いて、だから知っている人が居ることを喜んだ。

ずっと話してみたかった。
優しいあなた、その胸の内を知りたかった。
そんな私のあけすけな好奇心に、何を憚る事も無く、欲の色を見せてくれた。
尊い子だと、思った。

半ば駆けるようなステップでダンスフロアに到着する。
たたたたん、たたたたん、と。
互い同士が知る秘曲を足音で示せば、白猫はそれを察して跳ねる。
廻る君の手を、易々と掴み、駒のよう。
背に手を、腕に手を、視線は笑顔に、想いは心臓に。
かろく、かろく、無鉄砲なダンス。

四拍子はふとした瞬間に三拍子に。
三拍子はともすれば五拍子に。

それでも白猫には通じると思った、だから次は、あなたの歌。
恋を象った力強い曲。
切なさを切り取った瞬間、次は私の歌。
嫉妬を訴えた悲しい曲。
そしたら次は、あの日、君と語り合った舞踏会の曲。
手と手を打ち鳴らし、交差し、円を描いて。

「楽しい、楽しいね、リッツィ」

優しさを感じた瞬間に、人は優しさを与えているんだよ。
そう聞いたことがあった、素敵だと思った。
あなたからは無限大の愛を感じる。
だからあなたも、もしかしたら千歳から無限大の愛を感じているのかもしれない。
私が何も与えられないと嘆いている手の隙間から零れ落ちるものは、愛なのかもしれない。

あの日、社交場で、君がくれた水の一滴。
それはこの乾ききった心に確かに染み渡る。

ならば、確かに君はマナの娘。
私はマナの大樹になる。

■:リン

きっかけは些細なこと。

だけどそれは、後に繋がる確かな宝物。

次々に奏でられるメロディに
笑顔で答えて、合わせて舞う。

次はあの時の、次はこの時の
大丈夫、全てわかる。

ふと情景が浮かび、何か音がする。

鉱石ラジオの音だろうか
けれど、何かが光ったような、音

心に響くその音に
込み上げるのは『楽しい』という思い

きっと彼にも聞こえているはず
共鳴する、あの音が―

「うん、とても楽しいね!千歳さま!」

繋いだ手を離してくるりとターン

ふわりその手にまた、手を重ねれば
抱え上げられ共に、回る。

生い茂る大樹が風に揺れる。

目と目が合えば、にっこり微笑む。

心配しないで、忘れない。
貴方の愛が、ここに確かにあることを。

喜びも、悲しみも
嬉しさも、寂しさも

無限大の愛も、全部全部
届いていることを。
posted by 夏山千歳 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/253243803
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック