2012年01月07日

るーじゅ・べーる




..
それはフィナーレ直前の小休憩のこと。

「やんや、千歳の旦那ァ・・・」
「こんばんは、弼嬢」
彼らの会話は取りとめも無く。
流れる水のように、ごく自然にソファへ隣り合って座る。
「嬢ちゃんのォ、容態はァどうさな…」
「年内にギリギリといったところでしょうか」
「そンならァ、年迎える前にィ・・・可愛くしてェ、やンねェとなァ・・・」
「えぇ、ふふ」

暫し、心地良い沈黙が流れる。
社交場から少し離れた、この一角。
人気もあまり無く照明もどこか控えめで、もの寂しさの中に安寧があった。
無言の問いかけに気付いたのは目隠しの淑女だった。
「・・・あァ、そうさな。約束だったァ、かいねィ・・・」
「はい、お約束なのです」
淑女が指を鳴らせば、颯爽と人造兵がバッグを持ち寄る。
中にはネイルのコレクションがずらりと鎮座していた。

「きれいにしてくださいね?」
「ならァ・・・可愛くゥ、してェやンしょ・・・」
「いやそれ何か違いません」
「綺麗可愛いてェ、やつさな・・・」
「そこは妥協しませんかどっちかを」
説得する事、十数分。
折衷案を受け入れた淑女はバッグの中から一際、艶美な一群を取り出した。

「さてェ、旦那ァ・・・どの朱がァいいかいねェ?」

古今東西、さまざまな赤がとり揃う。

きっと淑女のコレクションの中でも、自慢の一品たちばかりなのだろう。
じっと吟味していた青年が、曖昧な色味の一本を摘み上げる。
「こちらの赤で」
「由来はァ、いかに・・・」
「楽園、という薔薇から」
オレンジがかった赤色は、赤茶の中ではあどけなく、しかし口元にやればあでやかに咲くだろう。

青年の爪をエタノール洗浄し、色を乗せる。
常日頃、青系統のネイルを好む青年の指先に、血潮が宿る。
「今度」
一本、また一本と。
十の貝殻に灯が点る。
「弼嬢にも、お返ししなくちゃですね」
「んァ?」
「千歳色」
普段程の身長差も無く、少し下にある目線の先に、小瓶をふる。
その時。

「千歳さまーーーーっ!!」
どーんと、ソファの後ろ側からタックルしてきたのは闇鍋双六社交場ダンスと大忙しだった白猫の少女、と。
「リンセさん待って下さいませ〜」
息を切らせつつ、後を追いかけてきた若草色の闇天使。
賑々しくも華やかな二人の登場に、先客二人は目を丸くした。

「やァ、いらっしゃい」
「弼さん、千歳さん、御機嫌よう。
今年もアレの準備ができましたの!」
「ルディちゃえらいのよ!白猫もがんばった!たのしみ、ね!」
「それはそれは、お疲れ様でした」
えらいえらいと白猫の頭をひと撫でして・・・そういえば今は人型だったと、それ以上撫でようとする手を自重する。
その時、くんと白猫の鼻が動き。
「千歳さまー、赤色!」
「あらまぁ、珍しいですのね」
「やんやァ、ルディ嬢こそォ、愛らし桃色じゃァ、無ェですかィ?」
「うん、ルディちゃ、かわいいのよ!」
「ネイル組ですね・・・ねぇ?弼嬢?」
「・・・へェ。そうさなァ、千歳の旦那ァ」
先客達の意味有りげな視線に、二人が首をかしげている間に。
青年は席を立ち、代わりに白猫が座らせられ、開いたバッグには色とりどりの宝石箱。
戸惑う白猫には構いもせず、そこに闇天使も加わって、この色が似合うだとか、いやこの色こそがと、かしましく。

指先に、あなたもヒトツ、鉱石を。
それは時には宇宙となりて。

少女ぷらすわんの夜は、更けていった。
posted by 夏山千歳 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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