2011年09月17日

旅日記

■長月十三日
風は捕えられず果ててゆく

水は手をすり抜け落ちてゆく

樹ならば自らのものになると思うでしょうか
いいえ、樹は樹の思う通りにしか、育ちません




青年は何の気なしに日記帳をめくっていた。
紡がれてきた今までと是から。
人々が営んできた証。
その内の結構な枚数を自らのみで綴ってしまった事へ、反省とも羞恥ともつかない感慨を覚える。
いっそ出国の際には、自分が書いたものは全て消してしまおうか。
苦笑をもらす。
恐らく、そんな事は出来ないだろう。
百頁に到達したら国を出るのも悪くないと秘め事にも似た戯れを思った。

その瞬間。

深く低い地鳴りが響いた。
辺りを見回し近場に高所が無い事を確認すると、青年は羽虫を高く高く飛ばす。
実体を持たぬ精霊は青年の目となり耳となる。
『視』えた。
発信源は北西、他には見られない緋色の寝殿造の王宮、は。


「・・・ワンズ」


青年の顔色から血の気が引いた。
世界で一番、身近な筈の頭から足先までが、頼りないものになる。
その場に膝をついて、ただ叫び祈りたい衝動さえ湧き上がる。
誰か、あの国を助けて、と。

だから、ぐっと堪える。
一刻も惜しい、しかし、今しかできぬ事もある。
どこからともなく現れた虎に飛び乗る。

彼らは真っ直ぐに倉庫へと駆け出した。
posted by 夏山千歳 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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