2011年07月17日

以下、異大陸とNPCが主役の物語となります
同姓間の性行為を示唆する文章、反道徳的な文章があります
背後様が15歳未満の方は閲覧をご遠慮ください
また、そういった内容が苦手な方もご注意くださいませ

イド消滅RPより転載 2005年4月23日筆


..
かろかろと哂うやうに時は過ぎて往く。



かの家を出て数日。
少しの着替えと路銀を持って、彼は逃げ続けていました。
何からでもなく。
ただ自分に迫る恐怖から。

錯覚と申されますか?
気が触れたと申されますか?
それでも彼は怯えていました。

・・・ええ、それでも仔は怯えていたのです。



途切れる事が無い紺色の雑音は世界を染め上げていく。
恵みとも呼ばれるが、疎まれる事の方が、実は多い其れは淡々と作業する。
水を吸った衣は鈍い音を立てた。
仔の身体に張り付き、徐々に体温を奪っていく。
このまま傘も差さずに居れば、間違いなく風邪を引くだろう。
だけど仔は塵も構わず。
変わらず、雨の中、一人呆け歩いていた。
其の姿を見つめる幾つかの目が有る事にも気付かずに。

愚鈍なのだろう、と判断したのか。
幾つかの目の中の一つが、他の目に指令を送り。
布の上からでもわかる痩せ細った身体を、一瞬のうちに裏路地に引き込んだ。
誰も居ない道で、誰も窓を開けず。
誰も知らないまま、束の間、仔は世界から消える。



抵抗するな、と男達は脅しながら仔の服を剥いでいく。
元々、意識の空ろだったのもあって、仔は一切の抵抗を見せなかった。
協力する様子も無いようだが。

男達の行為は、酷く暴力的だった。
身体は何度も殴られ、切られ、そして犯された。
脅す意味が無いじゃないか・・・と。
ほんの少し残っていた意識で、理不尽な男達の姿を哂っていた。
蒼い地面が赤く、白く、染まってゆく。
仔は目を瞑った。




喰い尽くせば良い。
痛めつければ良い。
そして出来るなら、俺を殺せば良い。

被虐的なだけか罪を償おうとしているのか解からないが。
仔は、少しだけ、笑えた。



生理的な反応以外、それらしいものを返さない仔に。
男達は薄気味悪く思いながらも、止める事無く暴力を振るい続けた。
段々とエスカレートする。
マトモな人間の反応を返さないのが腹立たしいのかもしれない。
ぐったりと力の抜けた身体は、時々強請るように緊張した。



路上は太鼓のように、ずっと雨を受け止めている。
不定期に、しかし絶える事の無い音を波紋のように広げながら。
ボロボロの衣服を纏いながら・・・其れを纏っているとは言えないかもしれないが・・・仔は、変わらず歩んでいた。
酷い暴力を受け、身体を痛めながらも。
ただ、一心に、もしくは心など無いように。
何処へとも無く、仔は歩んでいた。

「人殺し。」

まるで童話に出て来る悪戯好きの妖精のような、おどけた声が響き渡る。
耳煩いほどに勢いを増した雨音より大きい音でないのに、仔の耳にはっきりと聞こえた。
透けた身体が、仔の前に浮かぶ。
其の姿は仔と瓜二つで、少し幼かった。

「人殺し、お前は、何処へ行くんだい。」

「・・・・・何処へ・・?」

クスクスと笑いながら、そう、何処へ、と復唱する。
その様子は無邪気に笑うと言うよりも、哀れんでいるようだった。

「・・・・・。」

ぽとりと涙が一滴、雨に混ざる。
呟かれた声はあまりに小さくて。
それでも、目の前の影には聞こえたようだ。
何時の間にか現れていた、仔の記憶の具現化した生物を、その手に擁き。

「人殺し。
お前はもう苦しまなくて良いよ。
優しくなくて良いよ。
無理に人を想わなくても良い。

お前の信じられる人だけ、また、探しなさい。
お前は。」

潰す。
何の躊躇も無く。

「愛してくれる人を探して良いのだから。
・・・かの青年を永久に待っても良い。
だけど、待つ事と愛される事は、違うからね。

全て忘れなさい、愛しい人、未来の私の叔父。」

元々、普通の生物とは違ったのだろう。
生物の肉片も体液も飛び散る事も無く。
結晶と成って更々と消えていった。
水の流れに溶けていった。

「北へ行きなさい。
其処にお前を助けてくれる人が居るから。」

影は薄く微笑む。
それは先程の態度とは違い。
初めて接する人へのものだった。


「さようなら、イド。」

額にキスを落として、消えた。



暫くぼぅ、と宙を見上げていた仔だったが。
次第に幾つも刻まれた身体の傷が、実感と成って侵食してきた。

「ぁ・・・あああぁぁ・・・
・・・・・・・・・・・・・アアアアアアアアアアアァァァ!!!」

爪を立てながら両腕を掻き毟る・・・否、抱きしめる。
その場に崩れ落ち、自らに起こった事への嫌悪感にもがき、嘔吐し。
収まらない恐怖から逃げるように、駆け出した。

真っ直ぐに、北へ。




地面に残った吐瀉物も、赤や白の液体も。
ざぁざぁと止む事の無い雨が、洗い流し。
やがて其処は最初から何も無かったかのように。

途切れる事の無い紺色の雨音が世界を染め直していった。





かろかろと哂うやうに時は過ぎて往く。



同居人が失踪してから、どのくらいの時がたったのだろうか。
多分、一ヶ月かその辺だと人は言う。
だけど青年には一年のようにも、一週間のようにも思えた。
二人、ただ静かに暮らしてきたというのに。
突然の蒸発に青年は、すっかり抜け殻の虚ろとなっていたのだ。
春先の雨が空気を塗らす卯月の末。
青年のこころうちを表すかのように、静かで・・・断続的な天音が農場に響き渡る。
大きな水音と共に。

不審感を持って外に出ると、人が倒れていた。
倒れた時に出来たとは到底思えない傷を身体中に付けて。
早る鼓動を抑えつつ駆け寄る。
麦穂色の長い髪、薄闇に浮かび上がる白い翼。
泥に汚れていたが、それは確かに消えた相棒のもので。

「・・・イドさ?」

自分が汚れるのも構わず、抱き起こす。
久しぶりに触れた仔の身体は、数ヶ月前より痩せ衰えていた。
仔は完全に気を失っており、起きる様子も見せないので、そのまま抱き上げて家の中に戻ることにした。

「イドさ、おかえり、おかえりね。」
頬の汚れを軽く拭い、耳元で囁く。
その様子は、まるで捨て猫を拾った子供のようにも見えた。
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posted by 夏山千歳 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 昔話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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