2011年01月05日

finger

だけど太陽が昇るからついていこう


..
■むせかえることもなく眠る@千歳

何度も青い髪を見掛けた。
遠い遠い空の色。
手を伸ばしても届かない。

「ちーた様」

ぼうと立っていた青の旅人に、ひょこり青年は顔を覗く。
もう時間はかすかにしか残っていないし、伝えたいことは全て、あの一言に込めたつもりだった。

けれど未練がある。
きっと未練は永久に消えない。
誰と別れる時でも、誰が消える時でも。
だからこれが最後と自分に言い聞かせた。
これが最後、これで終わり。

手を差し延べる。
いつもの優しくて、穏やかで、底が知れない笑顔で。

でも、きっとこの人にはばれていただろうな。

「握手をしましょう」
それでも涙を嫌うこの人だから、最後は笑顔を見せたかった。

■@リュクシース

握手をしましょう、とたおやかな青年の言う。
声に言葉に込められた切なさに、狡い自分は知らぬ振り。

「握手でいいのか?」

微笑んで捧げられた手を掬い上げて、己の口元に引き寄せる。
眼を伏せて、考えること暫し。

男にしては綺麗な形の爪先にひとつ、
流麗な線と色彩を描き出す指にひとつ、
時には巨大な戦斧を振り回す手首にひとつ。

掠めるばかりではなく唇を押し当てて、ふと顔を見る。
常にドギマギさせられてばっかりの、意趣返しにもなりはしないが。
さてどんな反応を見せてくれるだろうか、ここ一番の大勝負だ。

■@千歳

また鳥が旅立っていく。

「握手でいいのか?」
手袋を取られながら問いかけられて。
なにを、と思った瞬間、頭が真白になった。

何時もの笑顔以外に、どんな顔をしていいのか判らなかった。
喜怒哀楽がころころと変わる目の前の旅人とは対照的に、青年は表情の起伏が小さい。
だからこそ感情が崩れる時、幼いと形容されかねない顔を見せた。

爪先に霞のようなくすぐったさ。
指の関節に吐息の暖かさ。
手首にしっかりと唇の柔らかさ。

「ぁ、え・・・ッ」

唯一の右耳まで真っ赤に染まる。
あからさまな困惑の中に、夢心地に震える唇。
常は冷たい掌も指先まで熱を宿す。
顔を隠す事も忘れて、瞳一杯に旅人を映していた。

旅立つ鳥が最後に鳴いた、高く一声。
最後まで、それに翻弄された。

「ちー・・・リュクシース、様・・・」
ようやく現状を理解したのか、もう片手で顔を隠す。
「な、泣かすなって、仰ったの、貴方なのに」
瞳が水の膜を張る。
「や、やぁ、ちぃが泣きそう・・・」
未だ混乱しているのか、一人称まで怪しく幼くなる。
しかし決して目を逸らせずにいた。
真っ直ぐ見つめる青い瞳の、感情は読めない。

あなたの一喜一憂が、私には幸いでした。

「でも、ちぃは幸せ、です」
顔を隠す事を止めて、両手で旅人の手を包む。
今度は青年の口元へ寄せ、手の甲に無邪気なキスをヒトツ。
そのまま、つかの間のダンスが始まった。
posted by 夏山千歳 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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