2011年01月04日

光を手にしたようで

見違える毎日


..
■光を知った@千歳

うたかたのように変化し、美しく、はかない。
どこかうつろな空間には見知った人が何人も居て、皆が楽しそうに踊っていた。
「盛況ですねぇ」
話しかけた先の金髪も、どこかで誰かと踊る幻影を見た。

「私もどなたかお誘いしてみましょうかしら」
その言葉に金髪の男は嬉しく思っただろう。
彼は宴が盛り上がることを、こよなく愛する。

髪を解いた。
前髪が降ろされ、精悍とも呼べた印象から、いつもの凡庸な青年へ変わる。

「千歳、一度はリードされてみとうございました」
スカートを広げるようにマントを摘む。
もう片手は胸に置いて、膝を折り、まるで淑女のように。
「私を浚ってくださいませんか?」

「・・・喜んで」

軽く眉を寄せている男性の、差し出された手に手を重ねる。
初めて、上からの。

そのまま手を引かれ、もう片手が背に触れられる。
これまで青年がしてきたそれをされ、自分自身は腕に腕を乗せる。
違和感は拭いきれないままステップが始まる。

軽い音がして仮面が落下した。

直感的に、この出会いは危険だと思った。
青年も目の前の男性もヒトを愛しすぎる傾向がある。
脆く柔らかい心をむき出しにして。
青年は心を護る為、笑顔で牽制し壁を作った。
男性は愛を公言し、真摯に軽薄に振舞った。
何度も傷ついて学んだ、その結果は近くて遠く、しかし本質は変わらなかった。

身を任せ、相手の思うままにステップを刻む。
いや、相手の目を、心を読んで、進む先を合わせる。
思考は無にならない。
めぐりめぐる記憶を胸に、じっと目の前の青を見つめた。
小春日和の空の色。

気の良い友人。
もっと早く出会えたら、と思わないわけでもない。
しかし、このタイミングの千歳だったから良かったんだとも思った。

好きで、好きで、ヒトという生き物が愛しすぎて。
伝えきった話だけでも、青年は自分とよく似ていると思っていた。
そして話して更に確信した。
ヒトを愛しヒトにのめり込む二人の、この出会いは危険だったのだと。

「・・・ふふ」
息が詰まる。
心臓から足先へ広がる甘い痛み。
「思っていた以上に難しゅうございますねぇ」

よく似ていたから、何を言えば喜ぶか、何を望んでいるのか、なんとなく理解できた。
自分がこうして欲しい、こうしたいという欲が、よく当て嵌った。
滅多に無い思考の合致に恍惚とした。
そして、そのことが何よりも怖ろしかった。

でも、だけど。
「でも、楽しい」
無邪気な笑みが零れる。
変わりゆくのだと知った、諦めない心を教えてもらった。
強く優しい、善い人間になりたいと思った。
「嬉しい」
この出会いに恐れを、そしてそれ以上の光を知った。

くるり、支えられて回った。
景色が移り変わる様が新鮮で、腰に回された手がくすぐったくて、笑ってしまう。
怪訝に思われたかもしれない。
けれど構わなかった。
夢、幻の如く。

この瞳の奥の深淵に指を差し入れて、かきまぜられて。
隠してきたものを全て暴かれたことがある。
そのきっかけがあったから今の自分があると理解している。
でも、その時、心は死んで。
胸の内の墓標に眠らせた。

幾つもの遺愛に土をかけ、ここまで生きてきた。

一言、一言、零す度に。
目の前の瞳が熱を持つ。
触れてくる手が強張る。
訴える千々の感情に、心臓が千切られる。

会話を重ねる内に守りたいと思った。
庇護欲を抱いた。
「夏山さん」
染み入る声、でも。
「あなたは、私にとって、あたたかい」
違った、違う。
ずっと守られてきたのは私の方だ。

心が、またヒトツ、剥離する。

くるり、腕の中で回った。
マントが青年と聖職者を遮断する。
再び聖職者と向き合う時、青年は変貌を遂げていた。
白い大陸風の上着に、黒の下穿き。
同じく黒の羽織りを上にし、髪飾りは極彩色の羽の束へ。
すっかり何時もの格好へ、何時もの夏山千歳へと戻っていた。
髪が揺れて頬を隠す。

「・・・千歳も」

胡蝶の夢、春が賢者の幻と。
何度も呟いた一節が頭を過ぎった。

「AN殿は、千歳の光です」

これは夢幻。
しかし決して死ぬことが無い、むげん。
posted by 夏山千歳 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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