2011年02月23日

椿の護り続ける傍らで

(青年は離れの一室にて、文机に向かっていた

(癖の無い丁寧な字を、あたたかくにじむ万年筆で書き上げると

(暫くそれを灯に当てて、乾かしてから小さく折りたたみ始めた




(障子を開ける

(裸足のまま縁側に出る、足元には椿の一輪挿し

(名残の冬の夜を仰いだ

(手には紙飛行機がヒトツ



(それを、強めの風の中、そっと空へと解き放った..



拝啓。


冬の寒さも和らぎ梅の蕾も膨らんで参りました。
清涼の香りが鼻腔を擽るたびに、過ぎ行く季節に胸が締め付けられます。

丁度、一週間の時が過ぎましたね。
幾星霜も経たようであり、まるで数刻前のようであるような、相反する感慨を覚えます。

人が居た証拠は、いつだって徐々に風化してゆきます。
記憶をおさめ続ける肉の器も、何度も打ち鍛えられた金鉄であっても。
誰かが生きて居た記録は、時が優しく磨耗してゆきます。
かつてあなたと過ごした、あのあどけなく鮮やかな日々であっても。

だからこそ忘れないという誓いは、いっとう輝くのだと私は考えます。

あなたは今、何処にいらっしゃるのでしょうか。
笑って過ごしていらっしゃるのでしょうか。
それを知る術は私にはありません。
しかし確信できる事もございます。
何処にあっても、あなたの心は私を見守っていてくださるのだと。
あなたはそういう方だと存じておりますから。

私は夏山千歳であり続けます。
何を失っても、何を護ることができなくても。
私は夏山千歳を捨てること無く生きてゆきます。
だから、あなたも

これから様々な花が地上を彩りましょう。
何時だって何処だってあえかに笑う彼女らが、あなたの心のお慰めになりますよう、心から祈っております。

どうぞ、お達者で。


敬具。
posted by 夏山千歳 at 19:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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