2011年02月02日

新年会

八珠堂威紺殿



(素っ気無い灰色の便箋

(その手紙は右肩上がりの癖を持った大陸の共通語で書かれていた


..
よう、久しいな
互いに忙しないせいか、中々ゆっくり会う時間も無ぇもんだ
前に会ったのは・・・あの件、以来か
お前さんに手紙を送るのも、どれくらいぶりだろう
たまには、こういう古風なのも悪くないな

こっちは年末から家の方で休養やら本業?やらをしていた
この時期は特に雪山からの魔物に注意を払わねばならない
自然という魔物にも、な
休耕期間は団を絞り上げるにも丁度良い

桂は単純に、俺が長く居ることを喜んでいるよ
あいつには何時も寂しい思いばかりさせていると、負い目を覚える事もある
けれど、あの街は暖かい
俺が居ない間も、あの街の人達はあいつに優しくしてやってくれているそうだ
どこかで傷つき疲れた人々が寄り集まってできた街だし
何よりもリーダーが旧知とあっちゃあ、あいつに悪い事もそうそうできやしねぇな
後見人が俺だからってのも、あるか

会う度に心身共に、すくすくと竹の子のように育っていく
喜ばしくとも、少し寂しくあるな
親がいなくても子は育つってのは正しかったか、とね

赤音はどうだい
学院から連絡は受け取っているンだろう
俺にまで伝達が届かないってことは元気にやっている証拠だとは思うけれど
大きくなったんだろうな
ガリガリに痩せて、ちっぽけだった子が、どう成長しているか全く予測がつかない
少しは母親に似てきたのかな
だと良いな、と思う

そういや先月末頃に新年会とやらに呼ばれた
お前さんは覚えているかな、ウィルフェアっつー旧知の有翼人種の所でな
初対面もいたが中々、愉快な面子だった
こちとら大陸を越えて傭兵家業だっつーのに遠慮容赦無く呼びつけてくれやがって
魔導船発着から30分以内でツェンバーに辿り着く俺は、自分で言うのも何だが偉いと思った

もう話しても良いだろう
朗報だ、ただしお前さんは怒るかもしれないな

伽藺の居場所が見つかった
いや、ずっと居場所は知っていた
もう2年くらい前になるのかな、その冬頃から連絡を取り始めた
紆余曲折あったが、俺の目から見てあいつは幸せに暮らしている
ついこの間なんか結婚もした
正しく、あいつが望み、愛した男とな

お前さんは、きっと顔を真っ赤にして読んでいるんだろうな
まぁ、その伴侶っつーのも、あまり胸を張って紹介できるような男じゃねぇが
伽藺を何よりも優先し、伽藺だけを見つめている事に関しては他の誰の追随も許さないような奴だ
俺からしてみりゃ悪くない夫婦だと思うけど
まぁ、お兄ちゃんからしてみりゃ、どんな男でも不本意なんだろうな

その夫妻とも新年会で会ったんだ
娘のような存在も居た
全くの偶然なんだが、あの白い翼の小鳥にそっくりだった
よく笑って喋って動き回る絵の好きな女の子だった
あの3人が一緒に居るのは、俺には少し眩しすぎる光景だったよ

ウィルフェアの所にも新しく同居人ができたらしい
酒豪だ外見詐欺だ何だと言われていたが、良い意味で気安い子だった
つい子供扱いしちまったが怒っちゃいねぇようだった、かな
ウィルフェア自身も相変わらずだった
変わらないな、あの男は

まぁ、なんだ
そろそろあっちの大陸をメインにして、また少し巡回をするつもりだし
その前にでも暇を作って、こっちの家にも一度くらい来い
桂は逃げるかもしれんがひっ捕まえておくからよ
来てくれ、なんて言い方じゃお前さんも逃げるだろ
いちおー親父なんだから、息子の面くらい拝んで、どういう街に住んでいるか知っておけ

こんなもんかな
じゃあな、また会えることを願って
あなたに風の導きを



ティル・ラー・ポット
posted by 夏山千歳 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 火の鳥の手紙、又は手記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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