2011年01月24日

禊 肆

若干のホラー、グロテスク描写があります
御注意ください


..

少女がくさっていった、役立たずと罵られた。
殺したくないの、いや、いや、いや。
ちがうの、そばにいて、ごめんなさい。
貴方じゃ駄目、もう傷つきたくない、嘘、傷つけたくない、嘘。
肉がおちてた。
かいなが足りない、もっとだきしめて、もっともっともっと。
胡蝶の夢はもう嫌ぁぁ嗚呼アアアアア。
わたくしをえらんで、わたくしだけをみて。
かな兄ぃの首が千切れた。
幸せになっていいのかな。
あなたとずっと踊りたかったの、あの三曲目が終わってから。
まもりたい、でもそれ以上に、まもって。
血溜まりの中に、私の耳が落ちていた。



だれか、たすけて。




聖職者は反射的に潜水を試みようとし、留まる。
足を滑らせたにせよ、攣ったにせよ、意識を失ったのであれば尚更、身体は浮く筈だ。
ならば、どうして浸水したのか?
想像に心が凍りついた。

ふと聞いた、彼は金木犀の血を持つ魔性の一族の末裔。
最も純度の高い血に、幾人も惑わされてきた。

震えの止まらない身体を抑えつけるように深呼吸を一度。
再び、深く息を吸い、暗い世界へ飛び込む。
月光が降り注ぐ水面とは対照的に、視界の先は暗い。
浅い場所ならばまだしも暗闇の世界に浸った場合、天地が逆転したらもう帰ることは出来ないんじゃないだろうか。
怖気付く心をこじ開けるように、水をかきわける。
布地の重さに、どこか冷静な頭が、これは長く持たないと告げた。

インクを零したような湖底から光が舞い上がる。
気泡と共に、しかしそれよりも早く、水流を無視してたゆたう幾つもの光。
そう、舞い上がるという表現がぴったりだ。
淡く確かなそれに聖職者は見覚えがあった。
青年の使役するヒトツ、実体を持たぬ羽虫の精霊。
その光の発生地点へ向かい、真っ直ぐに水を蹴る。
程なくして幻想的とも言える光景の中に、信じたくなかった事実があった。
posted by 夏山千歳 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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