2011年01月01日

星先案内人(ディレクターズ・カットver)

さぁ、夢の時間が始まります


..

それまで連ねた歴史を失おうとも、ダンスホールは輝きを失っていなかった。
既に続々と入場が果たされた会場は極彩色で溢れかえる。

道々やコーナーに点在する白にはプレートが掲げられている。
皆で作り上げた多くのスノーマンが道しるべとして立っていた。
既に夜もふけ、窓の向こうはとっぷり濃紺に浸かっている。
紅のカーテンが縁取り、銀の星が瞬いていた。
その全てを内包する金のホール。

金は永久を象徴する。

ダンスホールに一組の男女が入場した。
恐らく見知った人々は彼らに期待のまなざしを寄せただろう。
このペアの姿は数年前から見られていた。
星屑の一人でもある、そしてオープニングを彩ったペアでもある。
しかし彼らはホールの中央へ進まない。
代わりに慈しみ合う兄妹のように寄り添い、手と手を重ねる。
スポットライトが降り注いだ。

「ご歓談の最中、失礼します」
ソプラノが遮り。
「八年目となる宴も順調で何より」
テノールが響き。
「さぁ、夢の時間が始まります」
二音が重なる。

「私、ユキ・トーカと夏山千歳で」
「皆様をエスコートさせていただきます」
一本のマイクを通して、波紋のように声が共鳴する。
円が出来上がる。
「これより披露されるのは、開始を彩るオープニングダンス」
「紡がれるのは昨年のベストカップルのお二方」

「「曲目は交響曲第38番、第1楽章」」


「何だかんだで今年も御一緒できましたね」
オープニングダンスの最中、マイクを切って青年は呟く。
偶然の結果ではあるが一昨年、昨年と二年続けてオープニングダンスを担当した者として感慨は大きいのだろう。
「えぇ、実行委員の皆様のご采配に感謝しなくちゃね」
少女もまた笑みを浮かべて青年を見上げる。

「ランダムダンスでもお会いできれば良いのですけれど」
「たいげんそーご、でしたっけ?」
「えぇ、大言壮語なのです」
人々の目を惹きつける黒衣と麗人に視線を向けた。
「お会いできなくても、きっと踊れると思っています」
終了五分前の合図を送って、楽団へもテンポを遅くするように指示を出す。
頭が仕事モードに切り替わり、区切りのための原稿に目を落とした。
その須臾で。

「星の巡り合わせね」

完全に不意をつかれた一言に、青年は目を見開く。
「・・・はい、巡り合わせ、です」
少女は時に予想だにしない言葉を与えてくれる。
その多くは恩愛として青年の胸の内に刻まれる。
あと一分だとボードが向けられた。
少女は右手を、青年は左手を繋ぐ。

「・・・これにて区切りと致します」

会場の明かりは落とされ、再びスポットライトに照らされた。


「・・・これにて区切りと致します」
悪戯めいたやりとりの中、互いを支え合う姿は眩しかった。
気取らない感嘆は本心を示す。

会場は須臾で変化した。

「ルー・J=フィガロ様とギゼ・アレイスター様に、どうぞ盛大な拍手を」
青年は声高らかに手を広げる。
「次はポイントの説明になります」
少女は胸に手を当て唱和する。

「夢の続きは新たな夢へ」
「星の航路の道標は」
「きっと貴方の傍らに」
「どうか千代に八千代にと」
「煌めく記憶になるように」
彼らの声は会場中にユニゾンする。
ここちよく、ふくいくと。

「私達は星の案内人」

二人は再び手を重ね、深く礼をした。
「御拝聴ありがとうございました」
posted by 夏山千歳 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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