2011年01月12日

彼の話 『指輪を通す』

(腕の内でこんこんと眠る機械人形を抱いたまま

(深く頭を下げる


この度は、私の判断ミスにより多大なご迷惑、ご心配をおかけしてしまい申し訳ございません
保護者という立場への理解、自覚が足りず、少なくない方々に不快な思いをさせてしまって・・・

理性の判断として
暫しの間、公の場には顔を出さない事に決めました
自戒、自粛、安定、けじめ
理由は様々です
今は、この行動で、この時間で、ゆっくりと生きて行こうと思います

もう一度だけ、大変申し訳ございませんでした
そして心配を、お慈悲をくださった全ての方々へ
ありがとうございます



..

青年は目を瞑って反芻する。
かけられた言葉、みかけた仕種、とどけられた手紙。
様々な想いを篭められた全てを、ただ静かに思い返していた。

厳しいものもあったろう。
優しいものもあったろう。
しかし全ては青年への好意で溢れていると理解できた。

「・・・駄目ね、うぬぼれちゃ」

自分で自分の心を刺す。
それは好意を与えてくれた人々には、裏切りに近い行為かもしれない。
届かない好意に胸を焼く痛みを知っている。
それでも信じてはならないと思った。
理解と感謝を忘れないために、信じてはならないと思った。

尊いものでなくてはならない。
自分なんかを好いてくださる方は、本当に希少なんだ。
私は生きることを許していただいているのだと。

卑屈とも取れる思考は、青年自身の不器用な本音だった。
叱咤でもあり、憧憬でもあり、蔑称でもあり。


生きたい、と。
叫ぶ魂の本質でも、あった。


手元にあった紙の一枚を透かす。
最初は輝く記憶にある結晶のように思えて、呆然とした。
次第に故郷の和紙のように思えて、泣きたくなった。
どちらも幸福だった。

指輪を左手の中指に通す。
いつか仔鳥の足にあった金細工の輪を思い出した。
足枷だと笑っていた。
今は、生きるための糧なのだと、笑っていた。

今は懐に無い緑の輝石を思いながら、高く、高く掲げる。
冬の空は澄んでいて、遠い。
雪が降る。
降り積もる。
私の心にも降り積もる。

灰色の光を受けて、鈍く光る指輪は。
しかし不可思議なあたたかみを放っていた。

この指輪も、きっと私を生かすためのヒトツになる。

指輪は、そう語っているようだった。
posted by 夏山千歳 at 01:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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