2009年12月08日

遠古

人によっては不快な表現があります
イド消滅(NL)RPの関係者か、よほど深く事情を知りたい、そういった方以外の閲覧はすすめられません
ご注意くださいませ



..
(火の鳥の部屋、誰もいないそこには何枚もの薄い紙が散らばっていた

(それはつたないが丁寧なムロマチ語で書かれている

(しかし大陸に広く普及している文字の癖を持った、手紙だった



あの時代を俺はもう殆ど覚えていない。
削除ではなく風化という形で俺の記憶は薄れていく。
きっと忘れないと思った。
きっと覚えていると思った。
だのに俺はもう殆ど覚えていない。

かすかに残っているのは、馬鹿で楽しくて賑やかだった冬の日々。
年甲斐も無く、ただただ無邪気に雪を投げ合っていた。



俺は貴方に幾つもの役割を押し付けてしまった。

兄さんは俺を俺として見てはくれなかった。
最後に残った大切で大切で可愛くて仕方の無い幼い弟としか、認識していなかったんだ。
か弱いから外に出るたびに心配された。
幼いから弓矢に触れるたびに苦い顔をされた。
大切だから大風の日に空を飛ぶなんて以ての外。
俺はそういうことをしちゃいけない、だって大切でか弱くて幼い弟だから。

貴方の視線は、それに似ていた。
対等でありたいと何度も繰り返し言ったとしても、取り合ってもらえなかった。
もらえなかったなんて認識である時点で、俺は対等になれる筈がない。
だから、きっと、なれる筈がないって思い込みがいけなかったんだろうな。

俺と貴方はきっと良い友人になれたんだよ。

一番最初に掬い上げてくれた手が、とても眩しくて魅了された。
まさしく俺は雛鳥だった。
毎日、話をしたね。
街中で貴方を見かけて俺から駆け寄った事もあった。
だけど逆に貴方が近づいてきてくれた事もあった。
約束をすることもなく声が枯れるまで、楽しい話や悲しい話を沢山した。
俺にとって、そういう人は初めてだった。
そういう存在がいるなんて今まで知らなかった。
俺は一箇所に留まれない旅人だから。
だから、だから俺は必要とされていると勘違いしたんだ。

貴方と話をするのが楽しかった。
笑ってくれるのが嬉しかった、慌てているのが面白かった。
怒っているのは怖かった、悲しんでいるときは慰めたかった。

その時、俺は貴方をかわいそうな人だと思った。

もっと笑って欲しかった。
同時に笑わせられるのは俺だけだと信じたかった。
気を楽にして欲しかった。
政務の話に煩わされないのは俺といる時だけだと信じたかった。
悲しいときは何時までも話を聞いて楽になって欲しかった。
慰められるのは俺だけだと信じたかった。
誰も彼もに必要とされる貴方に必要とされることに優越感を感じていた。
そういうふうに、なりたくて、そうであると、思いたかった。

貴方の一番になりたかった。
感情は変質する。
そのうち俺が欲しがったのは貴方というステイタス。
ただ、はなしをするのが、たのしかっただけだったのに。
そして俺の一番になってほしかった。
だからまず俺は俺を差し出した。
友人じゃ一番になれないと思っていた。
家族じゃ自分だけを見てもらえやしないと思った。
初めて自分を見てもらえた事が嬉くて、手を放したくなかった。
だから不確定要素は削除した。
友人も家族も絶対ではない、絶対なのは所有欲の許される関係。
素直に恋人になってくださいって言えなかったのは、貴方は特殊な状況に身を置いていたから。
みんなのもので、だれのものでもない。

模倣をすることが貴方の気を引く手段だった。
自分を大切にしない手段は、貴方を見て覚えた。
どこか行っちゃうよって素振りも覚えた。
引き止められることは、貴方にとって価値のある存在だと言ってもらう事に等しい。
そして、すっかりそれに依存しきっていた俺は、そうじゃない自分はいらなかった。

必要とされたい、必要とされたい、必要としてください。

大事にしたいという感情は、大事にされたいという感情に押し潰されて無くなってしまった。
ただただ必要とされたいだけ。
欲しがるのならば与えなきゃね、枯渇しちゃうよ。
これは恋だろうか、愛だろうか。
・・・原初の感情においては恋だったかもしれない。
だが変質したこの感情を俺は独りよがりと呼ぶよ。
酷い事を沢山して、ごめんね。
もう今更、そんな言葉は聞き飽きただろうから、誤られたくなんかないだろうけれど。
愛情を欲しがって、ただ欲しがって、与えようとしなくて、ごめんね。

貴方に幸せになってほしかったんだ。
そしてできれば一緒に。
大切な友達と一緒に皆で幸せになりたかった。

形はなんだっていい、ううん。
友人でよかったんだよ。
だって、今、あの最初の冬しか思い出せないってことは。
その時が一番、幸せだったって言っているようなものじゃないか。
何時も馬鹿してじゃれ合って。
時々、愚痴って。
悲しいときには黙って話を聞いて。
寂しいときは、暖炉の前でココアを飲んで。
傷ついたときはそっと見守って。
痛みを墓標に埋めたときに、ようやく笑って話をする。
あぁ、そんなことも、あっなぁって。

そう、なりたかった。
それが一番長くしていられるのが所有欲の認められる関係だから、そうありたかった、だけ。

積み重ねていったものは二人の責任だけど。
引き金を引いたのは、俺の強欲のせいだ。
道を間違えさせてしまった。
貴方を傷つけてしまった。
だから、どうしたら、貴方に償えるのかな。
憧憬も、友情も、同情も、独占も。
全て押し付けて不快な思いばかりさせた貴方に。
このまま会わなければ良い、というのも選択肢だ。
貴方の望みを知りたい。
今でも何もかもを忘れたいのかな、それなら、このまま



(そこで手紙は途切れていた
posted by 夏山千歳 at 03:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 火の鳥の手紙、又は手記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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