2009年11月10日

あけのほし、よるのとばり

□イド=サトライ

髪を切る

長かった髪を切る

少年は明日を見上げる
ぽっかりと浮かぶ満月も、何処までも広がる青空も、名残惜しげに手をふる夕日も彼を引き止めはしない
強く、ただ強く明日を睨み付ける


・・・生きて行こう


少年は明日へ歩き出した


異土=里来
短くなった髪を風になびかせ少年は歩き出す


□ティル・ラーポット

26歳、赤毛、赤眼
頭部、両耳、背中に3対の赤い翼
サングラスと重い服装を好む
ティーラという略称を名乗り内密のメッセンジャーとして大陸を飛び回る
火の鳥

■徒然
青年は数年ぶりに、この大陸へと脚を踏み入れていた。
始まりは一通の手紙。
美しいムロマチ語で書かれた依頼が自分を過去に還らせる事となった。
何もかもを失った二十歳を越えて、自分は何を学んだだろう。
今、此処には疲れた顔の男しか居ない。


..
「あんたから連絡があるとは思わなかった」
刺々しさを隠さぬ低い声に苦笑が漏れる。
彼は若い。
けれどそれは年相応の青さだ。
成長を拒否して時を止めた彼の「前身」を思えば十分に健全な証拠だ。
「それで何。
俺はあの大陸に戻るつもりは、もう毛頭無いんだけど」
「いや、お前さんじゃなくてな」
年月を感じる。
子鳥を追って踏み入れた月の国、新たの大陸の解放、愛した人の喪失、幼なじみの婚姻、そしてそして・・・。
押し寄せる思い出に、痛みよりも懐かしさを感じる歳になって、取り残された自分がいる事に気付いた。
「野暮用だ」
伸びた髪は乾いていた。
指の節もしわを刻むようになった。
瞳を影が覆う。
ますます日の当たらない世界で生きるようになった肌の白さだけが変わらなかった。
「元気そうで良かったよ、サトライ」
薄く笑いかけると困ったような顔をされる。
笑顔を堪える時の、彼の癖だ。
「あんたは変わらないな」
「そうか」
「イドの記憶の頃から変わらない」
顔を上げる。
「記憶・・・が、あるのか?」
声を上げて笑われた。
偏屈者の彼にしては珍しい。
「あんたはよく精神がどうのとか言ってたけど、物質が残るとは思わなかったのな」
懐かしむような遠い目をして彼は続ける。
その瞳に痛みはあっても傷みはない。
記憶として存在していても思い出としては存在していない。
彼の感じる懐かしさは読み込んだ物語を紐解くのと、変わらない。
「脳が覚えているんだ、魔導映写機みたいで面白いよ」
posted by 夏山千歳 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 火の鳥の手紙、又は手記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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