2009年11月08日

手紙 了



..
「笑って送り出してやらなきゃ、ですよね。
月並みですけれど」
『空蝉宮はきっと千歳の淋しさも受け入れるよ、あれはそういう精霊だから』
だから憎悪だなんて勘違いしないで。
笑っていて。
そう訴える声が何処か必死で、今度こそ笑みが零れた。

森羅万象を認め、赦し、許容する。
精神の癒しの精霊。
元は有翼人種の少年であり、恋を知り、身体を捨て、罪を知り、そして赦しを知った。
空蝉宮。
夏の終わりの短い最中しか生けられぬ。
日暮のような一生を駆け抜ける先に何が待ち構えているのかは、誰も知らない。
だから、この別れは笑顔で彩ろう。
淋しい記憶では無かったのだと忘れぬように。
手紙を送ろう。
話す言葉も無くてよい、気付かれ無くてよい、一目だけで良い。

あの人に会いたい、と呟く。

ささやかな彼の最後の願いを叶えるために、手紙を書こう。



posted by 夏山千歳 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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