2008年12月29日

混迷、後、スウィートカクテルは波乱を呼ぶか?

彼らのカクテルは悪質で、どうしようもなく甘い。



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■さてと*リク

無事に第一夜を乗り切って、一息つくのが社交場である。
もう厨房には戻らない。
いや、戻れない。
戻ったら確実に宴に戻ってこれなさそうだ。

「そう、こんなときのために、ANさんに教わっていた必殺の、カクテルなんかつくってみましょうか」

何が必殺なのかは分からないが、占い師はせめて厨房に負担をかけないよう、堅実な道を選んだようだ。
「翡翠色に、オリーブ色を重ねて。二層にするとすごく、千歳さんっぽいかも」
なんて思いながら、慎重に、カクテルの色を調合し始めた。

「名づけて!千歳すぺしゃるー」

・・・ネーミングセンスは、いまいち。


■緑と紫は混迷中@千歳

何やら真剣な表情でグラスに液体を注ぐ青年が一人。
指の間からは、二種類の緑が差異を出す不思議な液体が見える。

「ゼリーを型抜きして、それから・・・」
「それから?」
「やっぱり名前はさうざんどいやーの方が良いでしょうか、って」
驚いた様子で振り向く友人に対して、相変わらずの童顔気味のお顔だなぁとか思いつつ。
「何時の間にいらっしゃったのですか」
「うふふ、つい先程から」
裾で口元を隠しながら笑う。

面食らった様子ではあったが、直ぐに取り直した様に笑顔を返してくれた。
千歳のかけがえの無い・・・気兼ねなく話せる数少ない・・・友人。

「あぁ、でしたらちょっと待ってくださいね。
いまこれにゼリーを浮かべて、千歳さんすぺしゃるplusエクセレントせれくしょんに!」
「・・・まぁ、それはそれで素敵かと存じますよ」

それにしても随分とアルコールの香が強い。
辛口なのかと訪ねれば、いえ、そんなと照れたように手を横に振る。
それはそれで悪魔のようなカクテルで、それが千歳なのかぁとか思わなくは無いけれど。
「長うございますし『夏山』で宜しいんじゃありません?」
回避案を試みてみる。
「もっと可愛いほうが良いと思うのです。あ、『なっちゃん』とか?」
「それは少々わかりにくいかもしれませんね」
「むー、んと、じゃあ『ちー』」

表記はCheeと空中に指で示しながら、喜びのチアから取ったのですよと胸を張る。
こう、何だかんだで頼れる友人ではあるのだが・・・どうにもこういう所が無邪気で可愛くていけない。

頬が緩んでしまう。

ついつい頭を撫でたくなる。

むしろ今もしている。

やり返すために精一杯、背伸びする姿を見て、更に笑いを堪えながらながら。
「ありがとうなのですよ、りっきーさん」
何時もより砕けた口調で、いとおしむように笑った。


「で、りらくすぺしゃるは作られないのですか?」


■さらに続くよ混迷は*リク

オレンジのゼリーを何とか羽の形に型抜きし、歪ながらも羽飾りがオリーブ色のカクテルに浮かんだ。

「よし、完成!」

すっかり作業に没頭していた占い師、「りらくすぺしゃる」と言う単語に目を瞬かせる。
「僕がつくっても楽しくないです」
真顔で答えたあと、でも、と考え込み。
「紫色のカクテルができれば、抹茶アイスなんか浮かべると僕っぽい?」
「Σ抹茶アイス・・・さすがりっきーさんちょいす恐るべし」
「よく考えると、緑に紫ってシュールな色あわせですよね」
色鮮やかな紫には、緑が埋もれてしまいそうだ。逆ならばまだしも。

「と言うわけで僕はカクテルと言う柄ではありません。葡萄酒で十分・・・葡萄ジュースでもいいですし」
笑いながら、作ったばかりの緑色のカクテル・・・結局名前は「chee」で決まったようだ・・・を、千歳さんへと差し出す。
今日の衣装の色を、美味く再現できている。

「どうぞ、よかったら。お味は保証できますけれど、強いです」

さらっと言うが、ぷかぷか浮かぶオレンジのゼリーは歪な船のようで、それはそれで可愛らしい。

さあ、強くて甘いというそのカクテル、お味はいかが?


■混迷、後、スウィートカクテルは波乱を呼ぶか?@千歳 

「Chee」
何とも幼い響きになったものだ、とか。
それで強いというのは、やっぱり詐欺なんじゃなかろうか、とか。
手の中のグラスを眺めながら思う。

「上がお空で下がお山で、お羽根は鳥さんかしら、お天道様かしら」
茶化しながら一口。
絡みつくような甘みが通り抜けた先に、期待以上の熱さが喉を焼く。
最後に残ったアルコールの香りは実直だった。
「・・・これは・・・また、りっきーさん」
「はい?」
唇に残る青を舐めて考え込む。
割合、ぽんぽんと言葉が出てくる青年にしては珍しい光景。

「最終兵器にございますか?」
「ふふふ」

脊髄を流れる心地良さは、やっぱり単語選択がちょっとおかしくした。
そうそう酒に強い性質ではないので、最初からこの強さは後々のダンスが心配になる
「あ、次の組み合わせが発表されたようですよ!」
そう悩んでいる内に青年は行ってしまった様子。

どれどれと羽虫を使って表の確認。
「あらまぁ、ラッキーセブンのお相手は・・・」
踊れたら良いな、と踊るのは難しいかな、の中庸で淡く期待を抱いていた名前がそこにある。
嬉しくなっての二口目。

遠く聞こえてきたメロディーをBGMに思考する。
紫がメインで、抹茶のアイスが添えてあって、星屑が散らしてある甘い甘いフローズンカクテルは創れないだろうか、とユキ嬢に相談する事を。
そして出来ればそのアルコールは高くはならないか、と。


■スープ、スープ:ユキ

賑わう社交場に少女が1人。
その両手には何故か鍋が抱えられていた。
ごく一般の家庭用。
しかし少女が持つとやけに大きく見える。
よたよたと歩く様を見かねて、衛兵の1人が代わりに持ちましょう、と申し出た。
少女は感謝した。

どこに行くのか、衛兵が尋ねた。
「千歳様と、リラクス様のところに」
鍋の中身はリラクス氏考案のレシピ通りに作ったつもりのスープ。
それを友人である青年は「流れ星のスープ」と名付けられたそれを振舞っていた。
レシピを伝授された少女は、今年は自分がと意気込み持ち込んだ。

しかし彼らの元に辿り着く前に第二夜が始まろうとしていた。
駆ける少女。
衛兵は鍋を持ったまま立ち尽くした。

ダンスを終え、再びぱたぱたと戻ってきた。
曲の間に、衛兵はワゴンを用意してくれていた。
改めて礼を告げ、1人ワゴンを押しながら社交場を進む。

目当ての人は忙しそうだ。
一瞬戸惑うが、思い切って、おずおずと(どっち)声をかけた。

「千歳様に教えていただいたの。リラクス様が考えられたってお聞きしたのだけれど、ちゃんと美味しく出来ているか、みていただけないかしら」

鍋を差し出す。
おぼんが落ち、Σ(’’!びくっ


■そして、そのお味はいかが?*リク

「千歳様に教えていただいたの。リラクス様が考えられたってお聞きしたのだけれど、ちゃんと美味しく出来ているか、みていただけないかしら」

考え込んでいたところに声をかけられて、我に返った占い師。
振り返ればユキさんがワゴンを持ってきた。
「これ・・・スープですか?」
料理好きの本能で嗅ぎ分けて、おそらく「流れ星のスープ」・・・千歳さんが宮廷に忍び込んで探ていたレシピの・・・と察する。
「今年はユキさんが作ってくださったのですね」
そも、去年だって正式にメニューとして出したのではなく、スープが足りない!といわれて作っただけで。千歳さんに教えた時もかなり目分量だった。千歳さんはそれを纏めたらしい。

相変わらずまめな方だなあと思いつつも、それを教えあう千歳さんとユキさんという図は大変可愛らしいと思う。
とっても。すんごーく。
「いただいても?」
そういえば何も食べていないことを思い出し、近くにあったビッフェ用のスープ皿によそって、一口。

「あ、これ」

一口食べてみて、懐かしいような新しいような、混ざり合った気持ちで目をまたたかせた。
「おいしいです。改良を加えてくださったみたいですね」
幾つか、覚えのない材料の味を数えながら、占い師は笑った。


■おなかがすいたのマーチ@千歳

次の譜を確認する楽団を眺めながら目を伏せる。

くきゅるる。

「おなかすいたです・・・」
切なげに訴えるすきっ腹が情けない。
どんなに浮かれようが、どんなに酔っていようが、このままでは。
「ちーた様とお揃いになってしまうのです」
凄く失礼な事をナチュラルにこぼしては、ため息。
ちなみに名の挙がった青年は、視線の先で大きなハンバーガーに齧りついていた。

羨ましい。

というか妬ましい。

空腹は人から判断力と余裕を奪う。
何時に無く微妙な目付きで眺めていたが、ふと視界の隅に見慣れた青色が現れた。
何故か鍋の乗ったワゴンを押しているユキ嬢である。
そういえばと思い出す、昨年の小さな大騒動を。

あれは新年を明けてからの事。
わんこ達が結集しエージュ秘伝(と思われていた)のスープのレシピを盗もうとした事件があった。
占い師さんと、裏で機将様が取り成してくれた(と、かなり後になって知った)おかげで事件に関しては大事にならず、対したお叱りも受けずに済んだのだが。

「美味しゅうございましたねぇ、あのコンソメスープ」
バケットに良くあって、身体もぽかぽかに温まって。
実は一度、野菜がとろとろに崩れきるまで煮込んであるからお腹にも優しくて。
元は塩と胡椒だけで味付けされていて、それはそれで素材の味が生かされていて美味しかった。
だけれど、どう聞いても「大体このくらいで」の返答ばかり。

実は意外に料理のセンスは無い青年は目分量とか大の苦手。
困った末に、ほんの少し和風にアレンジしてからレシピを纏めたのだ。
そのレシピは今はユキ嬢の手元にある。

手近なテーブルからバケットを一本引っこ抜き、やや大股で近づき。
「ユキ嬢!りっきーさーん!!」
がばっと後ろから抱きつき、髪に顔を埋める。
すりすりすりと頬擦りをする度に、沈丁花の匂いが移る事だろう。

・・・黒髪の青年の方に。

「千歳にも分けて分けて分ーけーてーくださいましなぁー、お願いなのですー!」
恐らくこの青年に尾があったのなら。
今ほど、盛大にぶんぶんと振っている場面は無いだろう。
絶賛腹減り錯乱中。


■腹ペコぎゃんぐ襲来*リク

さてここに、慎重180センチ越えのほんわかさん(男)がいる。
お花ちゃんを髪にさしている。
そしてすこぶるお腹がすいているようだ。
「千歳さん、そんなにせずともスープならたくさんありますし、ちゃんと千歳さんの分もあると思いますよ?ね、ユキさん」
占い師が言うが、腹ペコさんにはあまり効果がない
「いますぐーいますぐくださいましなーっ」
子供のように駄々をこねるので、思わず占い師はその頭をなでなでとした。
和むなあと思いながら。
その隙に、ユキさんがスープをお皿に盛ってくれたようである。

大きなスプーンまでつけて、腹ペコぎゃんぐ(?)の目の前に差し出されたそのスープ・・・ほんのり和風の、改良版・・・は、おいしそうに湯気をほかほかとたてていた。
見る見るうちに、腹ペコぎゃんぐの目が輝く。

「いただきますっ」

即効、食べる。と、何かに気づいた占い師、思わず注意を・・・。
「あ、熱いですから気をつ・・」

「−−−−!!!??」

・・・遅かった。
「千歳さーーーーーん!?」


■Jeridさんにはカクテル、そしてガイウスさんに樽(まて*リク

うっかりカウンターの中で話し込んでいたので、どうやらバーテンダーと間違われている様子の占い師である。
「あ、えーと。Jeridさん!・・・僕、強いカクテルしか造れないんですけど、大丈夫ですか?」
一応気遣いを見せる。
「そういえば、ユキさんはフローズンカクテルを作れるとか、千歳さんから聞いたような?」
そして話を不意にユキさんへ振ってみた。

横でスタンバイしていた人造兵さんに、エー酒の樽を2つ持ってくるようにひそかに指示することも忘れない。
。○(だってあのガイウスさんですし、一応!


■汝ら恵みの井戸から喜びと共に水を汲むであろう @千歳

「−−−−!!!??」
「千歳さーーーーーん!?」

聞くも涙、語るも涙の惨劇の後。
大慌てで手渡された水を飲みつつ、ようやく一息。
「は、はひゅ、お腹の中まで火傷するところにございました・・・」
さすさす撫でながら、今度はふーふーしながら頂く。

「あぁ、そうそう、ユキ嬢、千歳からも注文しても宜しいでしょうか」
直ぐ傍で結晶の少女に話しかける占い師の声を聞いて、大事な事を思い出す。
「紫メインで抹茶アイスで甘くてアルコール度数の高いカクテルって作れません?」
我ながら無茶な注文ですけれど、と付け足して。
占い師の顔は見て見ないふり。

スープにバケット、つまみのチーズ。
そうそう、兎さんからおすそ分け頂いたピンクのスープもあったなぁ、と。
裾から保温タッパーを取り出している間に、何やらカウンターの周囲は賑わっていた。

あのエー酒を樽で頂く機将様を始めに。
縁が紡がれたのはフリージアと仔竜を連れた紳士。
サンタ姿が愛らしいウエイトレイスさんには、色男で名高い地図職人様がエスコート中。
遠目に見えるは紫のドレスの幼き御婦人に・・・おや、何やら白華の元に猫耳の王子様が現れる、か。

きっと見えない所でも様々な交流があるのだろう。
様子を見てカウンターを抜け出そう。
兎さんに頼まれたタッパーを詰めながら、散歩をしてみよう。


■やっとお1人:ユキ

おいしい、と言われ、心底ほっとした表情を見せる。
このスープは、昨年ほとんど交流の出来なかった内気なユキに千歳が授けた秘密兵器!

という背景があったりなかったり。

これで他の方のところにお届けに行っても大丈夫ねと思ったその時、まさにその青年が。
いつもと違う様子に、目を丸くする。
「まあ、千歳様。酔っていらっしゃるのかしら?ふふ、可愛い^^」
そして細める。
後の惨劇に再び丸く(以下略

カクテルのお話。
「作れるというか、うっかりすると普通に作ったつもりでもそうなっちゃうの。
でも、最近は上手になってきたのよ?」
言ってる側から、自分用によそったスープが冷製と、化していたりするのだが。

続いて注文される。
「紫メインで抹茶アイスで甘くてアルコール度数の高いカクテルって作れません?」
想像もつかないレシピにしばし止まる。
やおら、アルコール類が並ぶテーブルへ向かう。
クレーム・ド・カシスにご指定の抹茶アイス。
そこにこの国の人々が愛でるエー酒を加えてみるのは?
冬の恩恵と共に注ぎいれると、グラスの内と外で音をたてながら、完成へと近づいていく。
最上に雪の花を星屑のようにちりばめて−。

「お待たせしました(’’*」


■カクテルはフローズン。*リク

差し出されたカクテルに、ちょっとの間固まってみる。
そして千歳さんを見て。
もう一回カクテル。
「・・・りらくすぺしゃる?」
紫に抹茶アイスである。
「作れるものなんですねえ」
ほほーと感心しつつ、そのカクテルを受け取って・・・。

そのまま千歳さんへ手渡した。(まて

「千歳さん、もう一度魔法にかかってみませんか?きっと前のより、そう、ほんの少しね、悪質な」
それはつまり自分を悪質といっているような気もするが。


■そして青年は姿を消した@千歳

あれよあれよと言う間に目の前で作られていく小さな世界。
モスグリーンを抱いて、尚も煌く夜空のような。
ただし立ち上がるアルコールの香りが、予想される甘い一時を裏切る。
何とも美しく凶悪なカクテルだった。

「ありがとうございます、ユキ嬢。
素晴らしゅうございますねぇ!」
お礼を込めて髪を撫でる。
そういえば言いそびれていた占い師にもお礼の言葉とひと撫で。
「ふふ、りらくすぺしゃるですよ」
悪戯が成功し満面の笑み。
驚いた様子の占い師だったが、何やら納得したように頷いて。

何故かそのまま手渡された。

「千歳さん、もう一度魔法にかかってみませんか?
きっと前のより、そう、ほんの少しね、悪質な」

否と言わせぬ強い視線。
というか前より嬉しそうなのは何故。
ユキ嬢も、何時食べるのかと期待に満ちた表情。
そんな子犬のような目で見つめないでください、お二方とも。
「ぅー・・・」
覚悟を決めたように、まずは一口。
カシスの芳醇な香りが口いっぱいに広がり、アルコールの甘みが追い討ちをかける。
クリームの控えめな甘さがそれを打ち消すけれども、身体は芯から熱く、口内は凍てつくようだった。
「おい、しい?」
何とも不可思議な味わいに、ついつい油断してスプーンが進んでしまう。
抹茶アイスを占い師や結晶の少女に、はい、あーんとかしつつ。
気がつけばぺろりと平らげてしまっていた。

そう、『しまって』いた。

すっかり頬を紅潮させて、心此処にあらずといった様子の青年。
ご馳走様でしたと頭を下げて、それからずっと黙って座っていたかと思うと、おもむろに立ち上がる。

「ち、千歳さん?」
占い師の声にも反応を見せず、袖から空のタッパー・・・どうやって収納していたかは秘密だ・・・を取り出すと。
そのままふらふら人の波を掻い潜りながら、料理を詰める詰める。
長い腕を生かしながら、ざっくばらんにひょいひょいと。
途中、見かけた野薊の花をもふもふ。
ひらひら踊る足は蝶々のように右へ左へ。
人波に埋もれ、光に埋もれ、カーテンに埋もれ。


そのまま青年は宴の会場から姿を消してしまった。


■酔っ払いはいずこへか消えて*リク

「・・・千歳さん、大丈夫かな」
飲ませた本人が言う。
何様か、とつっこまれそうだが、幸いにもそこに突っ込み担当の人間は居なかったようだ。
遠ざかる背中を見送り、占い師はきょろっとあたりを見渡した。
バルコニーのスタンさんと目が合った。
煙。

「・・・おおー」
なんとなく拍手をしたら、スタンさんが微妙な顔をしたのは、何故だろうか。


■やがて青年は帰還する@千歳

「ふあ、良く眠りました」
それはもう休憩が終わるだろう時刻。
何時の間にかホールの入り口では、やたら背の高い青年があくびをしていた。
翡翠の法衣に眠たそうに擦る目の横には沈丁花。
消える前とまるで変わらぬ格好で青年はそこに立っていた。

「でも何であんな場所に居たんでしょ」
幾ら深酔いしていたとは言え、気がついたら城の一室のソファで眠っていたなんて。
目が覚めた時、今から後半のダンスに間に合うのか、と青ざめたものだったが。
部屋の外で待機していた衛兵さんがホールまで優しく・・・なぜか優しく、天女だとか呟きながら・・・先導してくれたから。
どうにか間に合う事ができた、というのが事の顛末らしい。

そんな回想をしている間に。
誰もが心落ち着かぬだろう指名ダンスの結果発表が行われた。

「・・・ん」
知っていた、というには語弊がある。
予感はしていた。
きっと彼女とは踊れぬだろうという予感が。
だから張り出された結果を見ても、アナウンスを聞いても、さしたる落胆は無かった。
むしろ叶ったら良いと思っていたペアが発表された時は、あまりに嬉しくて手を叩いた程だ。
「まぁ、また来年があるでしょうね」
さっぱりした笑顔で誰とも無しに呟く姿こそ、実は最大の意地っ張りの証拠だったりする。

それでも矢張り小さく思う。

後夜祭になったら友人にカクテルを作ってもらおう。
機将の名を冠したアルコールを。

さてそうとなったら気になるのはペア組み。
現金なものである。
あと二曲、新たなる出会いがあるのだろうかと胸を弾ませる。
つらつらと発表される名を見て。
「あらまぁ」
にんまりと笑う。

さて今宵はどうやって迎えに行こうか。
誰よりも咲き乱れているのに、恥ずかしがりやで意地っ張りな・・・まるで自分を見るような華を。
ともあれまずは逃さぬようにしなくては、と固く心に誓いつつ。


やがて最高潮を迎える舞台に、青年も帰還する。
posted by 夏山千歳 at 14:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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